芦澤:

時間が押していて、予定の時間が過ぎているんですけど、マルヤガーデンズだけお聞きしたいなと思っています。僕は最初、マルヤガーデンズと聞いたときに、庭を設計したのかなと思っていました。詳しくはわかっていなかったのですけど、スライドを見させてもらうとちょっと違うなと。どうやら、庭的なものをつくられたんだろうなと思っていて、その辺のところを山崎さんから直にお聞きしたいなと思いました。

山崎:

わかりました。これは鹿児島の天文館っていう昔の中心街です。そこにある三越が撤退するということになって、女性社長の多摩川さんという人が、自分が百貨店やりますと言ってマルヤガーデンズという場所をつくることになりました。設計はみかんぐみの竹内さんがしていまして、全館のアートディレクションをナガオカケンメイさんがされていて、僕はその中のコミュニティーの部分を担当しました。やったことは、パーフォレーションといって、中心市街地に穴を空けていくんです。穴を空けていくとその中心にショップとかが色々入ってくる。密集した市街地に部外者が入ってこないのと同じで、ファッションのフロアにファッションの興味のない人たちは入ってこないので、それぞれのフロアに穴を空けていくんです。つまり、すべての階層にガーデンをつくっていく。10階建のデパートなんですが、すべての階層にガーデンをつくりましょうと提案しました。ただ、ガーデンをつくればいいということじゃなくて、大きいところ、小さいところ、キッチンのあるところ、AV機器が整っているところ、それぞれいろんなかたちをしたガーデンがあるんですけども、そこで活動するコミュニティーの人たちに選んでもらって。コミュニティーがいくつか日替わりで共有していく、その場所でいろんなことが起きているということを考えました。ちょうど、この会場と似ていますね。隣にいっぱいテナントがあるんですよ。ラコステがあったり、ポロ・ラルフローレンがあったりする中に、こういう場所があって買い物に来た人たちは全部見えるということですね。だから、たまたま立ち寄ってくるいう人たちもいます。
コミュニティーが今はもう50ぐらい関わっていますので、コーディネーターが必要だということで、コーディネーターを育成するということも同時にやりました。今までのデパートは商品やサービスによる魅力でお客さんを惹きつけようとしてきたんですが、今の時代、商品やサービスはクリックすれば手に入ると思っている人たちが大半ですので、この人たちは、いくら魅力を出してもデパートに来ようとは思わないんですね。だから、むしろ、エコに興味があるとか不登校の児童に興味があるとか乳がんのことについて興味があるとか、そういう多様な興味をそれぞれのコミュニティーの人たちが情報発信して、この、クリックでものを買おうと思っている人たちにデパートに来てもらう。何回も通ってる間に、こんなものがあるんだって気付いたら、買って帰ってもらうというようなやり方でマルヤガーデンズをやっていってはどうかなと思いました。じゃあ、いったいその多様なプログラムを誰がやってくれるのかということになり、鹿児島市内のNPOやサークル団体、クラブ団体を回ってヒアリングして、一緒にマルヤガーデンズでやってくれませんかと誘って回りました。お誘いした40の団体がコミュニティーワークショップに出てきてくれて、マルヤガーデンズのコンセプトを説明したり、現地を工事中の現地を視察したりして、マルヤガーデンズでどんなことやりたいかという話を聞いてどんな設備が必要かという話を聞きました。各階にはガーデンという場所があって、ガーデンはテナントとは別にいろんなことができるという場所になっています。だから、ジルがあったりマックスマーラが入っていたりするんですが、ガーデンという穴が空いていて、それぞれのフロアで色々なことをやってくれていますね。
4月28日にオープンしてもうすぐ半年になるところです。次の写真が分かりやすくて、ラコステのショップがあって、通路を挟んで反対側ではセミナーをやっています。他にもアートもそうですし、それからフリースクールもそうですし、不登校の児童が作った野菜を売るだとかそういうこともこのデパートのガーデンと言われる場所でやっています。今、スライドでお見せしているのは、食育研究会という地産地消型で地域で採れたものでおいしい食事をつくりましょう、という料理教室をやっているNPOですが、そういう人たちが活動する場所ができてきました。
2010年の6月5日に、リノベーションのシンポジウムをやりました。竹内さんとか僕が関わってるヘッド研究会という、日本のリノベーションについて考えようというシンポジウムを各地でやっているんですけども、そのときにガーデン7というところで集まって、105人の建築家に来てもらってリノベーションについて議論しました。その日は地下1階で食育研究会が料理教室やっていて、地場産の野菜を不登校の児童たちと野菜を売っていて、他の階ではタイル貼りのワークショップをやっていて、4階では陶芸教室がやってたんですが、僕らは7階でシンポジウムやっていました。シンポジウムに105人の建築家がくると、ジュンク堂さんが6階から建築のリノベーション関係の本を持ってきて売ろうとするし、終わった後の懇親会はデュエルさんというカフェが担当してくれて、二次会は結婚式場のジャポナイズというところで105人全員が入ることができました。だから、何かコミュニティーが入ってくることで、近くのテナントの人たちのメリットにもなっています。

芦澤:

ありがとうございます。

 

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