平沼:
マルヤガーデンズについては偶然に、ナガオカさんからプロジェクトが始まるきっかけを聞いていたんですけど、もともとは、みかんぐみの竹内さんがやられていた耐震改修なんですよね。耐震改修をやるときに、ナガオカケンメイのD&DEPARTMENTをリーシングしたんですよね。
山崎:
そうです。
平沼:
リーシングをもっていって断られたんですよ。それをきっかけに半年ぐらいで仕上げたんですよね。
山崎:
僕が関わってからは4カ月でしたね。リーシングでD&DEPARTMENTを入れてもらえませんかというお願いにいったら、コンセプトが弱々でこういうところに僕は出したくないんですと断られたんです。ただ、この女性の社長の強いところは、あなただったらどんなコンセプトでやりますかと問い返したんですよね。そうしたらナガオカケンメイさんはデザイナー根性が出ちゃって、僕だったらですね、こうこうこうで…と喋ったら、じゃああなたが全館のディレクションやって下さいと言われたらしくて。そこからプロジェクトが始まったんですね。
平沼:
でも、大阪の人はあまりマルヤガーデンズをあまり知らないかもしれなくて…。僕も1回しか行ったことないのですが、東京ではすごい話題になっている百貨店の新しいかたちなので、ぜひ九州に行ったときは山崎さんの作品を含めて見に行くことをお薦めします。建築に関わっている方たちにとっては、本当に新しいかたちなのでいいと思います。
山崎:
おっ!なんじゃこりゃ!
芦澤:
事前に山崎さんから預かっていたスライドで、後半にもってきたら面白いのではないかという感じがしまして。この辺から話を広げていきたいなと思っているんですけど。
山崎:
なるほど。
芦澤:
セントラルパークが出ていますけど、これはどのような文脈ですか?
山崎:
左側が古いほうで右側が新しいほうです。僕らランドスケープアーキテクトの父と言われるオルムステッドという、セントラルパークを設計した人と言われています。1862年のことですね。この当時はですね、セントラルパークのマンハッタンで周りは農地と集落しかなかったんですよね。そのときに、将来ここを人口が増えて経済の中心地になって人口が増えて、超高層ビルが建つはずなので早い目にこの場所を確保しておきなさい、と言ったのがオルムステッドで、公園のデザインもしたのだからすごい先見の明の持ち主だなと言われているのが一般的な話です。ただ、とはいえアメリカの人口予測と言うのは、その当時から爆発的に増えるとわかっていたので、マンハッタンもヨーロッパみたいな5階以上の建物が建つだろうと容易に予想がついたんですね。確かに、人口爆発を予言して、都市に緑の絨毯をつくって、それがいまも残っているということはとてつもなくすごいことなんですが、人口が増えているときの予測というのはわかりやすい。将来的に人口密度は増えるんだから、ここに何か空けておくと将来価値ができますよという話です。振り返れば単純な構成でよかったんですが、僕らの生きる時代はそうじゃなくなってきている。人口増加の曲線ではなくなっているということなんです。増加曲線のときは、ランドスケープでどういうものをつくっていくかということだったのですが、2005年から人口減少という局面になってしまったので、これから減っていくときに僕らは何をつくるのかということが問われるようになるんじゃないかなと思っています。
芦澤:
それは日本においてですか。アジア、中国だとまた状況が違いますよね。
山崎:
20年後には一緒ですけどね。
芦澤:
一緒になるかな。
山崎:

はい。一人っ子政策が効いてますから。それはアメリカが一番遅いんですけどね。僕の考えでは人口が減るのは10年後ですね。中国は15年後から人口が減少しますが、北欧は減り始めていますね。つまり、日本が人口が減少先進国なんですよ。減るということが、ネガティブに捉えていると後進国になるんですが、減るときにどれだけ幸せに暮らしていけるかということを発明するところが世界に対して僕らは事例を発表できるんですね。2030年ですが、これはもう真っ赤ですよね。赤というのは人口がかなり減る県という意味です。大都市を抱えている都市は人口減少後進地なんですよ。遅れているところです。東京、神奈川なんていうのは未だに人口が増えるときのロジックでしか商売できないんですよね。インフラ通して土地の値段が上がったらどうですとか、リーシングでこうやったら人が集まって儲かります。でも、我が大阪はですね、大都市を抱えているにも関わらず、もう減っている。僕らは大都市を抱えながら人口減少している先進地に住んでいるんですよ。人口が減っていくときにみんなが幸せになれる方法を発明することができれば、日本国中のヒントになるし、スウェーデンもイギリスもみんな見習いたくなるようなプロジェクトをここで起こすことができると思っています。

 

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