平沼:
最後に二つ質問してもいいですか。一つは、建築物を持続可能なものにしていかなくてはいけないということと、プログラムに沿って空間が変化していくようなもの、つまりは持続していけるということが必要であったり、つくりっぱなしではだめだと感じています。ことのデザインについても同じことが言えて、一つだけ不思議なのは、山崎さんが関わられたプロジェクトって単年度で終わっていくものであったり公共予算を使っていくもので、こんなに永年でやっていけるものじゃないから、その村や山に建てたあとどう持続させていくのかが一点目。もう一つは、山崎さんみたいな活動を、どう次世代の建築の設計者として応援するのか。例えばすごい人たちがいて、憧れてこの道に入り、どんどん足を踏み込んでいったんだけど、山崎さんみたいな活動をどのように教育していくんだろうということを教えてください。
芦澤:
食っていけますか。
山崎:

えっとね、2点目に相当鋭い指摘なんですよね。1点目については割とよく答えていることなんですけど、僕ラグビー部だったんですよね。ラグビー部って続いているじゃないですか。続いてない学校もあるかもしれないですけど。サッカー部もラグビー部も続いているじゃないですか。顧問の先生いるけど、あんまり顧問の先生出てこなかったり、顧問の先生が急に変っちゃたりして…、代々続いているのがありますよね。プロジェクトもある種そうしていかない気がしているんですね。高校に新しくサッカー部をつくるときに、どういう風につくらなければいけないかというのとすごく似ている気がします。僕らがプロジェクトでどっかの島や村や町に入ったときに「5年間だけはここにいます」といいます。最初の一年間は手取り足取りプロジェクトをすべてやりますけど、2年目はそれの半分しかやりません。3年目はその半分しかやりません。やらなくなったところをあなた自身でやらなくちゃいけません、という風に最初に言うようにしていますね。だから、マルヤガーデンズのときも言いましたし、家島のときも言いましたし。もう8年になったらNPOをつくったので、いまはNPOの人たちが回してます。そういうクラブというかサークルというか、それをつくって、その人たちが回していけるような。新しいメンバーもその人が募集する。サークルも部活もそうですよね。新入生歓迎とかやって、どんどん引っ張ってくるじゃないですか。そういうことが事実的にできるような組織をつくる必要性を最初に伝えて、僕らは去っていくことで、「ずっといてくれるんと違うんや」という気持ちがすごく重要になってくると思います。それは「食っていけますか」ということに近いのですが、最初の年に僕らに1000万で発注してくれた行政の方から、だいたいですね、「すいません山崎さん。今年、予算減らされまして800万しかないんですよ。」みたいな話は必ず出てくるんですよ。そのとき僕らは、さっき言った論理を言ってますから、800万はやめてくださいと、500万にしてくれませんかと願い下げをするんですね。つまり、残りの500万はもう地元の人たちができることになっているんだから、僕が出していた業務項目を、これとこれとこれは地域の人たちができますから800万で仕事したくないんですと。300万円分僕らは仕事をしないので、この人たちがやるから発注額下げてくださいと、3年目は250万にしてくださいという風に下げていって、ちょっとでも別の地域に関わりたいんですよ。こんなことやらなきゃいけない地域はいっぱいありますから。行政はどんどん財源減らされていますので、ちょっとでも住民参加でまちを運営したいと思ってるんですよ。福祉課も環境も教育委員会も、みんな自分たちではできない事業項目がいっぱいあるんですよ。それを住民参加で誰がやってくれるのかをみんなが知りたがっています。一つの地域にずっといるというのは僕らにはできないし、僕としてもできないし。それもあんまりやりたいことではないので、常にいろんな地域に関わりながら走り回ってる。だから全体的には大変だけど、ちゃんと食っていけるというか。これを言うと反感を買うかもしれませんが、建築の設計やってるときの何倍も食っていけますね。とはいえ、最後の質問が重要で、新卒の学生を全部studio-Lで採用するわけにはいかないわけですよね。「ごめん、うちちょっと無理だわ」と言うと「どういう事務所に就職するとそういう仕事ができますか」と次に問われるんですよ、学生から。そのときにこの事務所いいよと紹介できる事務所があまりないということが一番の悩みで。僕自身は建築の設計事務所に6年いてからこの仕事を始めたので、まずは建築の事務所にいって修行しろと言います。6年ぐらいしてその中で、やっぱりこの仕事をしようと思えば独立するしかないんじゃない、という風に答えるようにしてますが、ご指摘の通りやっぱりそろそろこういう仕事あるよ、と、こういうこと大事だよ、とメディア通じてどんどん言っていかない時期が来ているのかもしれないなと思ってます。だから、最初はそういう場に出るのが好きじゃなかったタイプなので、雑誌だとかテレビだとかあまり出ないし、声もあまりかからなかったのですが、最近これは使命だと思って、雑誌の取材とかテレビの取材だとかはお受けして、こういうことが必要になってくるんだと思いますということを、下手でもいいから伝えていかないといけないなというような気持ちに変わってきていますね。

芦澤:

今日は忙しい中、長い時間色々お話してもらって、僕らも含めて会場のみなさんも刺激的だったと思います。ありがとうございました。拍手を。

 

 
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