芦澤 : 次は宇土小学校のお話をお願いします。

赤松 : 【画像】これが一番最新のプロジェクトで、この夏に竣工して、2学期から使い始めています。くまもとアートポリスのプロジェクトになります。これはアートポリスのコンペのときに提出した模型写真、そのままです。

小嶋 : 【画像】さっきの模型もそうですが、こういうL型の壁が学校の中にいっぱいあります。周りは全部ガラスであいてしまう。それだけで学校なんてできてしまうのではないか、そういった提案をしました。オープンスクールでもないし、ふつうの教室でもない。黒板も可動で、それが一体、使い物になるのか、といろいろ ご心配いただきました。5 年生の子に、自分の教室から机と椅子を運んでもらって、原寸の教室を体育館の中にセットして、ワークショップの授業を我々がやっ たのですが、ランドセル棚が動線側にあるのはありえない!と叫ばれたり、教室の間のバッファスペースだったらまぁいいか、と言われたり、実際にこういったことを行いながら案を変えてきました。さっきも言ったように、赤松 は声がでかくて、仕切りがとれるんですけど、僕なんかはもう、小学校6年生の女の子にワーワー言われたりすると、逃げたくな ります(笑)。そういう意味では分業ですね。あ、でもそれだけじゃ駄目なので、ちゃんと設計はしていますよ(笑)。
【画像】こちらがプランです。L型の壁があって内と外が切れていれば、 これでいいんじゃないか、というつくり方です。

赤松 : 【画像】この写真の向こうに移っているのが旧校舎です。もともとこちらに校舎があって、グラウンドだったところに建物を建てて、校舎を取り壊して、今はグラウンド工事をやっているところです。立て替えのときは、現場が見下ろせたので、全員がバルコニーに出て見ていました。あとは、みんなを巻き込みながら、ボイドスラブに全校生徒800人がいろいろ書き込んで埋める、というイベントもしました。

小嶋 : 【画像】できあがった校舎です。外も中もない、雑木林のような場所、というのがコンセプトです。できあがってくるに従って、実際の中庭の雑木林だけでなくて、このL壁が2.7mグリッドでずれながら、最終的には1.35mずつずれながら、細かく揺らぎながら立っていって、そこを歩いていく体験自体が雑木林の中を歩いているような感じになったかな、と思います。

芦澤 : 雑木林というのは、どこから生まれてきたコンセプトでしょうか。

小嶋 : 自然の森ではなく、常に人間が入っていく明るい森をイメージしました。奥まで入っていっても下草がなくて、晴れている日なんかだと、まったく恐怖感がない。自分で経路選択、場所選択ができる。ハンモックを吊るしたくなるような、ある種の居心地の良さがある。建築というのは、そういうものを目指したらいいんじゃないかと最近思っています。

赤松 : 熊本の場合は、緑が強いというか、ものすごく緑が豊かだなぁというのが印象的だったので、緑をしっかり取り込んで、自然と一体的に、ということを意識していました。この建具が天井まで開いてしまうので、開けると庇がそのままつながって、それは結構新鮮な体験ですよ。建築の中を当たり前のようにトンボや虫がよぎっていくものですから。(笑)

小嶋 : さっきの写真の中で、白いストライプが見えていましたけれど、ここには掲示用に杉の木を埋め込んでいます。あとは、既存校舎にならって暖房も冷房も基本的には使っていません。

平沼 : この小学校は何校目の小学校ですか?すごいですね。

赤松 : 何校目かと言われると・・・

小嶋 : 真面目に考えるのはやめとこうよ(笑)。

芦澤 : でも相当な数を設計されていますよね。

小嶋 : インターナショナルスクールを入れたら10校くらいにはなると思います。この前にも未発表の、植物が育つのを待っている沖縄につくったインターナショナルスクールがあります。ブーゲンビリアが生成してからの方が良いので、まだ待っています。

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