芦澤 : では最後に、カタールのプロジェクトです。ここでは、光と空間の関わりについてすこし詳しく伺いたいです。

小嶋 : さっきしゃべってしまいましたけど、だいぶ前にしゃべった感じになっているので、簡単に言いますと、この建物は、ダブルルーフ・ダブルウォールで、 屋上はエアハンドリングとユニット(空 調機)があり、ルーバーがあって、壁も直射光が直接壁に当たらないためのシェードがかかっています。そのシェードの内側を黄色くぬって、反射だけで本体の白い壁面に色が映り込む ように見せています。この面とこの外側は全部白です。この方法 は、コルビジェがラトゥーレットの 僧院でやっていたり、それをスティーブン・ホールがしっかりと継承して、という過去の事例もあります。こちら側は、インダイレクトに 直射光が入ってきます。隣には、風の塔が中庭に立っていて、二重外壁になっているのがわかります。これを全部アルミルーバーでつくっています。二重壁になっていて、これが現場なんですけれど、初めて色が見えたときの写真です。高さ15メートルで、骨組みがいっぱいあると影だらけになってしまうので、パネルをステンレスケーブルで上から吊るしています。だから絶対的な平面が出ています。現地に行ってもらうと分かるのですが、感動的なくらいフラットです。かたちは、準 結晶の幾何学から生成した パターンで、3種類の型でリピートしながら無限 に広げていけます。 光っているのが白光源の照明で、それに対して裏面に塗装された黄色がうつりこんでいるだけで、黄色い光源を使っていないので、ネオンっぽくないのです。月夜の砂漠に 見ると、 すごくきれいなので、皆さんにもぜひご覧いただきたいです。

芦澤 : 砂漠の中にぽつんとあるのですか。

小嶋 : 以前はそうでしたけど、最近は何か、いっぱい周りにつくり始めていて、ちょっと暑苦しいことに なっています(笑)。

芦澤 : だいたい模型で決められた通りになりましたか。

小嶋 : だいたいは、そうですね。これはさっきのシェードです。これはまだファニチャーが入る前で、ここに黒川勉さんデザインのファニチャーが入ります。

芦澤 : はい。駆け足ですが、これが今日ご紹介する最後のプロジェクト、ベトナム・ホーチミンの大学です。端的に、サスティナビリティについてお聞きできればと思っています。

小嶋 : これは国際コンペで、北緯10度の熱帯エリアに提案して一等案をとりました。近くを流れている川を渡ってくる風が、結構気持ちがいいんです。今はマンゴー畑になっていて、こんな木が生えていないんですけど、マングローブの木は成長が速いので、徐々にメコンの原植生に戻していこうとしています。

芦澤 : これは、川に浮いているんでしょうか。川のほとりにあるのでしょうか。

小嶋 : どちらとも捉えられますよね。雨季になると冠水してしまうので、その中で最低限のメインキャンパスだけ冠水しないようにしています。 スコールは毎日降るから、流れてくる水だけでなくて、敷地に降ってくる水もすごい量 です。そういうところでは、風解析を徹底的にやらないと、冷房なしではいられません。規模としては、都市計画学部の他、建築・土木系の学部が6つある総合大学です。学生数は全部で6000人です。この中でひとつ問題になっているのが、スコール中の移動問題です。冷房を使わないので、音、風、熱、全部のものをどう拾い上げていくか、解析を行いながら設計しています。地盤回路もオーガニックパイルを使うなど、 土木の人たちとも一緒になって 議論しました。

芦澤 : ちょっと時間がないようなので、最後の質問です。建築家とは、小嶋さん、赤松さんにとってどんなお仕事でしょうか。

小嶋 : 単純に言えば、建物を建てるのは現地の人ですよね。そのめでたいことをもっとめでたくして、そこに何らかの社会性を一般化しうることを入れられたらいいなと思っています。そういう意味では、日本でも、もうちょっと何かできないかなと思い始めています。

赤松 : 人とのつながりであったり、あらゆる人と未来にむけて協働していける、いろんな可能性をもっている職業だなと思います。

芦澤 : 本日は小嶋さん、赤松さんにお越しいただきました。ありがとうございました。

小嶋・赤松 : ありがとうございました。

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