平沼 : 数年前、ペーター・メルクリと住宅のプロセス展をされていたときに、それまでの青木さんの住宅にすごく惚れ込んでいて、どうやったらこういう空間が順序立ててつくれるのかなって考えていたんです。あの展覧会で、こういう行って止まって、また違う方向にいってというやり方がいとも簡単に説明されていたんですけど、大変な量の案をやられていましたよね。

青木 : 一個の案をつくっていくために、あっちいったり、こうかなーって思って、やっぱり違うなあって思って。煩悩ですよね、だから108個の模型があるんだよね。

平沼 : いやー。(汗)

青木 : いや(笑)、偶然なんですよ。実際、110くらいあったんだけど、やっぱり煩悩の数だけあるなって感じで。スタッフがつくってきた模型に、これこうだから平面的にも少しこう変えたいから、じゃあどうなるのか考えてみて、ってやっているから、僕だけじゃなくてスタッフとの間でいろんな試行錯誤があるということで。設計の中で、試行錯誤してやってるときが一番楽しいですよね。

平沼 : 僕が面白いなって思ったのは、模型がプロセスに沿って並んでいるのをみていくと、ある一定の所まですごい良くなっていくんです。僕なんかだと、もうそこでいいじゃん、っていうところまできているのに、またちょっと逆戻りするんです。なんかですね、形態を失ったかのような感覚があったり…。

青木 : それはクライアントにそれを見せて、拒否されたりだったり、他にもいろんな理由があったんじゃないのかな?

平沼 : その蛇行、そのプロセスがすごく変わっていると感じて、それはさっきのオーバードライブという言葉に結びついているんじゃないかと、いま、思います。

芦澤 : 青木さんのそのルールというのは、例えばディティールですとか、最後まで徹底して落とし込まれるのでしょうか。僕の印象を申し上げると、あるひとつの強度をルールでつくって、それを担保していれば他は手放すようなこともおありなのかなと思ったのですがいかがですか。

青木 : すごいですね、そうなんですよね。僕は「ルール守る、守れ」って言っているけど、どちらかというと自分は守ってなくて、「あのそれは青木さんルール違反ですよ」っていうのが事務所の中の会話なんですね。今、たまたまメルクリとやってたときのお話しを出してもらったのですが、その住宅が今月、とうとう出来上がるんですよ。
あれから、またずいぶん変わっているんだけどね。まじめにつくろう、ルール通りにやろうってずっとしてきていて、それで一週間くらい前に、もう良いよねって、それで最後の最後で楽しいことをちょっと入れました。そんな感じで、ルールがいるっていうこと、徹底させるってことも必要で、ルールから逸脱することもおもしろいし大切だと思うんですね。

芦澤 : 最終的にユーザーの使い方がルール違反になっていくのは、まったくもって問題なく適応されていることですよね。

青木 : うん。ルールは基本的につくっていくためのルールだから、それが違う使われ方、守ってない使い方をするのは何とも思っていないんですよ。

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