青木 : 最近、岐南町という岐阜の庁舎のプロポーザルコンペがあって、負けちゃいましたけど、負けたかどうかはどうでもよくて。ここは周りに高速道路があって、町の人にアンケートをとると、求めていることは安全と普段行ける場所だって。え、安全がないんだって思ったんだけど。何しようかなと考えたときに、普通、建物ってこういうふうに建物があって庭園があるでしょ。でもこういうふうにつくった庭園ってあんまり使われないなぁという感じがあって、だったら建物の周りを軽く覆ってあげて、半室内のような場所をつくって新しい公共空間として提案できないかと。言わば縁側みたいなもので、縁側っていうと室内に属しているような庭に属しているような場所で、そこに周りの人が遊びにきたりとか将棋をやったりとか、家の中で生き生きしてるのが庭園でもなく、中の畳じゃなくて縁側だったりするじゃない。だからその縁側みたいなところが現代的につくれないかなと思ったんですよね。それで、周りに構造体があってこれで全部もっているんだけど、その内側に箱があってこれが求められている施設。その間は、空調は若干されているけどほとんど外みたいな緑も多い場所。断面でいうとこういうことですね。こっちが庁舎なんですけど、この中にこういう縁側的な空間がある。こっちは公民館なんだけど、途中に大きい庭園、縁側的庭園がつくれるといいかなと。構造家の小西さんに相談して面白いことに気がついて、外側をがっちりとした構造でつくると内側は水平力をほとんど負担しなくていいので、まず細くできますね。それから上に大屋根のトラスをつくっているから、下にホールみたいな場所をつくりたいときに、上から柱で吊ればよくて、逆に上にちょっとしたホールをつくりたいときは下から支えればよくて。普通は下からしかつくれないんだけど、こういう構造をつくると上からも下からもできる。そういう縁側庭園ができて、かつ建物が昔の数寄屋建築のような、構造だか仕上げだかわからないようなスケールで空間をつくることができるんじゃないかというのが提案なんですね。
外観は必ずしもオープンな感じではなくて、コンクリートとかの建物に一見みえるんだけど、中入るとこんな感じ。これを原っぱというのか何ていうか。庭園じゃんって言われたら庭園になるかもしれないけど、そういう場所が実際につくれるんじゃないかと思って。ここでは素材も重要といえば重要だけど、それ以前にここで言っている形式の、構造に近いのかもしれないんだけど、その縁側ってこう庭園のようなものをつくるための方式って言ったらいいかな。それが今の僕の関心です。

芦澤 : お聞きしていて非常に明快ですし、青木さんらしいアプローチで強度をもったつくられ方をされていて、僕らが知っている青木さんらしい、府に落ちるところがあります。

平沼 : あと10分になったんですけど、もうちょっと質問をさせてください。設計していてどんなことに問題を感じますか。

青木 : そうですね、設計ってあんまり問題って感じじゃなくて、自分の能力に沿うって感じるんだけど。クライアントが途中で意見を変えちゃうとすごくやりにくいけど、一貫した意見をもってくださっていればその人のために何が一番いいのかって考えるのが楽しいし、単にその人が満足するだけじゃなくて、僕もいいと思えるものをつくれることが設計の楽しさですよね。問題はあんまり感じないんですよね。

平沼 : なるほど、ご自身で建築家としての個性は何だと思われますか。

青木 : 例えば僕は人と話すのがすごく苦手なので、自分がつくったものを人に見せたいってあんまり思っていなくて。建築家としては相当な個性だとは思うんですよね。見せたがらないという。(笑)

平沼 : 例えば何か、んー建築を設計しているときの大変な問題って一番、決定するという勇気があるか。勇気!設計していて、例えば僕だったらもう決定することがもう不安で仕方がなかったりするんです。

青木 : うん。でも、楽しようって思っちゃうことがあるのね。なんかこういうふうにしてやってみようかって思うと、そこにいろいろ乗り越えなくちゃいけないものをなんとなく感じるでしょ。楽な方を選んでるなって思える時期もあるんじゃないかな。勇気って、そういうときにそれはダメだって言えるかどうかなんだけど、それは波がありますからしょうがない。

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