石山:これがその自分の家で、自分が住宅設計を止めようと思った最後の家です。屋上に、屋上庭園じゃなくて野菜畑もあるし、緑だらけになっちゃった。何しろ建築が見えない感じが、これは最近なかなか良いんですよね。こういう家を見ると皆さん安心してくれるんですね。建築がドーンと立ってると、あいつ怪しいって。なんかあいつはおかしいと言われるような時代になってきている。それは、理路整然とそうだろうと思います。でも、まあ、こういう状態っていうのは僕も結構面白い。良いなあと思うし、周りの人たちも、そういうような感じを共有してるっていうのが今の時代かなと思います。
関西の方は関西電力がまだしっかりしてますけど、東京にいると、東京電力なんかが無茶苦茶になってんですよね。それで、電力、エネルギーの自給自足ってことを一度やってみたいなぁと。私が習った先生がそういうことをやってましたんで、それで自分もエネルギーのことをやってみよう。自分の家は、自分で電気を取りたいなぁと。これは、ソーラーのバッテリ。もっと専門的に言うとソーラーセルなんですけど、これ一枚、今上海で買うと70円位なんです。これが、50枚集まると、0.4キロワットの電気ができる。パネルで買うと、30万から60万するんですね。僕は大阪の人じゃないんだけれども、値段ってものに非常に昔から敏感で、ちょっとケチなんでしょうね。鉱石ラジオってのが昔、僕の世代にはあったんですけど、それと同じように自分でソーラーセルをはんだ付けして、それで0.4キロワットの電気を自分の家では得ていると。これは中から見たとこで、これがセルですね。これ、ちょっと前に一枚1000円くらいで某メーカーから入手したんですけど、これは今、上海から持ってくると一枚70円ほどです。これは、インターネットに全部出てますから。非常に重要なこと言ってるんですね。産地直送なんです。これは、ドイツのボッシュなんかから買ってくると上海製の3倍くらいします。品質はいいですけどね。今世界で一番安いのは上海でしょう。上海だと、日本で売ってる30何万っていうパネルは、おそらく3万くらいでしょうね。大阪にはプラクティカルな人が多いはずなんで、もっと徹底的に勉強されたらいいなと痛感しています。
これ屋上です。ケチなもんですから、自分の家で自分で野菜を育てて食べたいなと。自分の家の屋上には野菜畑。グリーンなんて洒落たものはいらないんですよね。トマトとかキュウリとかナスとかが欲しいな。ね、芝生なんて馬鹿なことは絶対しないんですよ。最初の二年は、こういう風にやってたんですね。でも、三年目になったら飽きちゃうんですね。意外と野菜作るのは大変だってのも分かってきましてね。毎日毎日、屋上に行って堆肥なんかやったりするのね、疲れちゃうんですよね。それで、今は挫折してます。コルビュジェなんか、屋上庭園なんてつまらない抽象的なことを言ったんですけど、屋上には野菜畑があった方が良いなというようなことをちょっと思った時期があったんですね。それでこういうことをやってました。換気筒みたいなものが写ってますが、あれは韓国からインターネットで買ってきた、世界で一番よく回る換気筒です。運賃入れて4500円で買いました。
自分の家は自分で設計して大半は自分で施工したんですね。自分で全部やったわけじゃないですけど、ゼネコンは使わない。各部品メーカーとか各業種を揃えて、一般的なコストの三分の一くらいの値段で出来たんじゃないかと思います。最初は他人にも薦めてたんですね。こういうやり方が社会にはいいんじゃないですかと。でも、あんまり受け入れられなくて。大変なんですよね、やっぱり。非常に本質的な事をやると、やはり疲れるんですよ。それで、もうちょっと楽な方が良いなと。
このプロジェクトが一番新しい、今やってるプロジェクトですね。昔はハウスメーカーをすごい批判して、本にもずいぶん書きました。でもあんまり批判してるのもおかしいなーと、日和ってるわけじゃないんですけど。メーカーも頑張ってるんですね、値段は高いけどね。でも世界で、メーカーの住宅生産が総生産量の20%超えてるのは日本だけですから、それは悪いんじゃないんだな、やっぱり、それは非常に力がある。それから、前は施行体制ばっかり考えてたんだけど、設計のスタッフっていうのはなかなか良い人がいるんだね。僕も先生をやって、ちょっと長くなったもんですから、予想してたより僕の所から出た卒業した人がゼネコン行ったり、組織事務所行ったり、メーカーに行ったりしてるんですよね。やっぱり自分で育てた人ですから、彼らの力を使わないといけないなと。
ですから、半分はハウスメーカーに任せて、半分は自分たちのオリジナル、そういうものを混ぜて、ハウスメーカーとハイブリッド、混合式の住宅をつくってみたい。形はどうでもよいっていう風に言いたいけれども…、程々にやれば良いと。でも、ハウスメーカーと僕の所、零細設計事務所が、ドッキングしたやり方をとれないかということで、このアパートを設計してます。屋上に変なモノがついてるのは、私どもが開発している「ソーラーすだれ」といって、すだれ式のソーラーなんですね。上海、中国からソーラーセルを、誰でも輸入出来るんですよ。一枚70円から120円で売ってます。そういうモノを集めてくると、鉱石ラジオみたいにして発電所くらい出来るんですね。それを住宅で実現してやろうと。姿形は違うんですけれども、一番最初に見ていただいた「世田谷村」って言う私の自宅と、考え方は同じという風に思ってます。まぁ…この左の方の半分はハウスメーカーにお任せしよう、右はハウスメーカーのスタッフと一緒に、なんかやってみたいというような、そういう住宅づくりです。

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