倉方:じゃあ、始めましょうかね。それじゃまず、小さい頃の話しくらいからお聞きします。お二人はどんな少年でしたか?じゃあまず芦澤さんのほうから。
芦澤:えーっと、小さい頃はずっと野球をやっていました。
倉方:あ、そう。
芦澤:野球少年ですね。小学校6年までは。
倉方:どのポジション?
芦澤:それがすごいんですけどピッチャーで、4番で、キャプテン。
平沼:えっ、嘘みたいな本当の話?
倉方:ジャイアンみたいな感じですね。
芦澤:案の定すごい弱いチームでしたね。僕の独断と偏見で引っ張ってたチームなんで、あんまりよろしくない感じでしたね。
倉方:うん、その反省が今に至っているの?
芦澤:そうですね、活きていますかね。
倉方:なんかアトリエ事務所の設立の仕方が、それと同じような感じがするんだけど。でも割と全部自分でやるタイプじゃない?そうでもない?
芦澤:元々やるタイプですけど最近はなるべく手離そうとしてます。スタッフにある程度任したり。
倉方:ようやく少し、少年時代が終わりつつあると。
芦澤:そうかもしれない。コラボレーションとして職人さんと同じ目線でいろいろ考えたりだとか、学生と一緒にやったりだとかっていうのは、建築はじめた当初にはあんまり思考してなかったかなという気がしますね。
倉方:なるほど。平沼さんはいかがですか。
平沼:僕も4番でキャプテン!なんてことはなくてね、(笑)。小学生のころ僕も地域の少年野球団に入っていました。でも、親戚のお兄ちゃんの職業が波乗りで、小2くらいから海にばかり連れて行かれていました。その頃から、大きな波の起ちやすい岩場の多いポイントにいくことも多くて、丸坊主でヘルメットを被らされて、サーファーというような最近のかっこいいものでもなくて、ライダーというまじめな波乗り少年でした。
倉方:いつごろまでやっていたのですか?
平沼:まじめにやっていたのは、中学校の2年生くらいまでです。
倉方:少年時代の終わりでやめたという。
芦澤:でも、なかなか波乗りを披露してくれないのですよ。一緒に連れてってくれって言ってるんだけど僕を連れてってくれません。
倉方:(笑)。
3人で、今日のこのようなトークを、もともと1番最初にやったのが、あれ何年前でしたっけ?大阪の中之島公会堂っていうところでしたね?
平沼:懐かしいです。
芦澤:2009年だったかな。僕たちの30代の終わりの頃だったから4、5年前ですよね。
平沼:でも未だ4、5年前か。
倉方:確か2009年の大阪水都祭の時でしたね。お二方が国立国際美術館で展覧会を開催して、その記念講演をしました。
平沼:これ、ほんとうに緊張しましたよね。
芦澤:これガチガチ会でしたね、我々にとっては。
倉方:なんだか大きくてすごい会場でしたね。実はその時、進行役で呼ばれて。私さっき皆さんと同級生ってご紹介いただきましたけど、芦澤さんは私と同じ大学の同じ学年なんですね。芦澤さんもそうですけどずっと関東とか東京の人間。芦澤さんは学部を出て安藤忠雄さんの事務所に行って、それからずっと大阪にいて。私はずっと東京だったんで、芦澤さんは東京の視界から消えちゃって、でも、あっちで何かやってるぞっ、て感じのニュースは伝わってきて。そういう存在だったんですね。だからあんまり途中は会ってなくて、この時の前後ぐらいからまた会い始めました。平沼さんもその頃に知って、この講演会があって今に至るみたいな。私はその時は大阪に来るとは思ってなかったんです。
平沼:この倉方さんの写真、今よりもちょっと若くないですか。
倉方:そう若いよね(笑)
平沼:よくもまァ、30代の若い建築家と若い史家の会に、たくさんの人たちが見に来てくださいましたよね。みんな、希望に満ちたいい顔しているじゃないですか。
倉方:本当にこのときみんな30代ですからね。何よりも楽しかったね。っていうのがあって、また今日にそれ以来の面子で集まるのが面白い。
平沼:そうですね。
芦澤:一応過去を振り返るってのもいいね。
倉方:過去を振り返るね。
平沼:そ、それぞれはいろいろご一緒しているけど、3人はこの会以来ですよね。
倉方:今は私も大阪市立大学の教員なんで、大阪が本拠地ですけど、このときはめちゃくちゃアウェー感ありましたよね。
平沼:あっ、倉方さん、言ってた!(笑)
倉方:大阪のど真ん中の中之島公会堂で、大阪弁もしゃべれない人間がやるのはなかなかアウェー感があるんだけど、相変わらずしゃべってないっていう。
芦澤:なんで大阪にきたんでしたっけ?呼ばれたから?
倉方:ちゃんと公募というのがあって、公正な選考で選ばれたんですけども。それ以上でもそれ以下でもなんでもありません、はい。(笑)
芦澤:僕は自分が大阪に呼ばれたと勝手に思ってるんですけど。
倉方:でも大阪と合ってるよね、芦澤さん。
芦澤:自分は合ってると思い込んでいて、でも未だに大阪弁しゃべれないって周りから批評されるんですけど。
平沼:はははっ、(笑)そうそう変なの、大阪弁。
倉方:あとは大阪弁だけしゃべれれば完璧だと。
芦澤:“そうや“と思います。(笑)
倉方:アハハ、はい。こんな感じでそうですね。多くの方に来ていただいて盛況な会におわりました。でも、そんな建築家たちは、なぜ建築をやろうと思ったのですか?平沼さん。
平沼:なんかね、長くなりそうな話しですよね。
芦澤:簡潔に! |