塚本:これはブリズベンに特有のクイーンズランダーという住宅形式です。必ずベランダが高床式になって道側についているので、良い具合にプライバシーの距離が確保できます。みんなソファを出して暮らしています。日本ではベランダにリビングセットを置く感覚がありませんが、オーストラリアやメキシコでは、深いベランダをリビングのように家具で設えてあります。
次はニューオリンズにあるショットガンハウスといって、縦方向に部屋が連続していく家です。1階部分の60〜70cm上がった所にポーチがありまして、夕方になるとそこのイスに誰かが座っているのが街の風景になっています。
これは韓国にある昔の哲学者がつくった庵です。真ん中の所だけが温突が入っていて、冬も使えるようになっていますが、周りは全部吹きさらしで、夏の家の中に冬の家が包含されているような家です。
それに対して、現代の日本の住宅は核家族専用になっていて、どんどん家が小さくなって建物の距離がすごく近くなりがちです。住宅が閉鎖的になっていて、寛容さを失っています。これからの住宅は、そういったところを一つ一つ変えていって、人が気ままにふるまえるリラックスした空間を提供していかないといけないですね。それによって街並みも変わっていくと思います。
このロッジアを大々的に取り入れたのがタマロッジアです。1階の左下部分のロッジアが吹き抜けていて、2層分の吹き抜けたロッジアが角にあります。そこに面するように、ダイニング、リビング、二階の寝室二つ、それから浴室に繋がるサンルームがあります。正方形のプランの中にそれぞれのスペースをつくり込むか、連続させるかを考えているのですが、そのときは向きが重要です。近い距離でありながらもいろいろなものごとを同時に存在させる向きの合成を行っています。

平沼:すごいですね。

塚本:地味ですが、住宅の文法としてのオーセンティシティみたいなものがあるのです。各エレメントに新しさはないけれども、家具や開口が良いところに配置され、動線も含めて向きをうまく合成するのは、少し歪んだ体を整体してもらうと調子良くなるのに似ています。家の整体ですね。リビングルームは窓を大きくしがちだけれど、実は大きめの壁がもっと大事とか、ロッジアに出る窓はダイニングとの連続を重視するとか、テレビの前を人が横切らないとか。階段を全部見せるのはあまり良くないけど、最後の部分がダーっと溢れ出すのはバロックから続くホールの伝統なので、こんな小さい家でも入れてみているとか。こんな細かい説明した事無いです。(笑)

平沼・芦澤:あはは。(笑)

会場:(笑)

 

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