塚本:スマートハウスがテーマの展示場なので、色々な環境技術が組み込まれています。空間的には、階段の吹き抜けと2階のホールを含めた、高低差で重力換気が出来るようになっています。2階のホールは天井が高く、寝室に入る前に,小さな絵など掛けて少しあらたまった感じです。2階寝室の天井がロッジアの庇まで連続していて、ここは勉強する時に眺めがいい。2階でロッジアの上部に出られるようになっています。住宅メーカーの家なので、穏やかにつくっています。だいたいいつもそうですけど、ふふっ。あまり変な事をするつもりはありません。
次は、町家です。ものすごく好きです。日本人が編み出した住宅建築の形式で最も洗練されていると思います。でも自動車の登場前につくられた形式には、駐は痛かった。近代化は町家に暗い、寒い家というレッテルを貼った。一つずつ改善していけば寒さも明るさも克服できるはずですが、全体としてのあり方が否定されて、京都でもどんどん建て替えられています。ここに有名な顔の家がありますが、驚くべきはそれが町家の連続の中に作られたことです。これが自由ということなら、ずいぶんつまらない話です。街並みは人間がつくり出す偉大なものの一つです。むしろ自分たちの生活や仕事を合わせた方が良いのではないか。
これは金沢の東茶屋街です。それから旧中山道の奈良井宿です。コルビュジェの近代建築5原則に対抗して町家5原則をつくりました。隣の家と接する、細長い平面構成による奥行きのある空間、切妻平入形式、道路に接する、あとは間口を使い切るエレメントの反復。町家がよく残っている飛騨古川というところでは、変なものを建てると「相場くずし」と言って非難されます。伝統的建造物群保存地区に指定されるのを断って、自立的に維持している。つまり町の人たちは自分たちの町での家のつくり方を知っている。それはアイデンティティであり、人々は自身と、プライドを持っている。でも今ほとんどの日本人は、自分の町ではどういう家を建てたら良いか知らない。背景には第二次大戦後の焼け野原からの復興の過程で、建築を経済発展のエンジンにしようと、文化の領域にあった家作りを産業に移し替えてきた経緯があります。この過程で、工業化された住宅とともに、家のつくり方を知らない人たちが大量に生産された。その結果が、ひたすらランダムに建物が集積した今の東京の街並みです。実はこれは戦後状態を保存している。もう一度家のつくり方を人々が知っている状態に戻すなら、タイポロジーを導入しながら一つ一つの建物を一生懸命つくっていけば、町や都市の姿はやがて良くなっていくはずです。
これがタママチヤです。細長い敷地で3階建ての町家です。1階はショップ、事務所、あるいはガレージなどに使える場所にしています。2階には、ダイニング、リビング、3階に寝室があり、中央の吹抜けは坪庭の読み替えです。上にいくと、平面が縮むので、階によって吹抜けの位置が少しずつずれて噛み合った感じになります。次は、…あ、この塗装。次、う、ここの収まり。(笑)

平沼・芦沢・会場:(笑)


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