塚本:次は東工大の中で環境エネルギーに関する様々な分野の研究者が新しい組織をつくり、シナジー効果を生み出そうという施設です。大学の研究室と日本設計の共同設計です。年間で均したときの電力の自給自足と、従来の研究棟と比べて60%のCO2削減を達成しています。そのために、650kwの太陽光パネルによる太陽光発電と燃料電池による創エネルギー、実験チャンバーの繊細な風量設定と全熱交換器の組み合わせによる省エネルギー、また外部電源も確保したエネルギー源の分散化を図っています。太陽光パネル4800枚は必要ということで、太陽光パネルを壁面と屋根面に並べて、ソーラーエンヴェロップと呼ばれる覆いを作り、建物本体はその陰に隠れているような構成になりました。太陽光パネルは、10年経ったらどれだけ性能が変わるかわからない分野ですし、故障したときのことも考えて、規格品を用い、かつ全てのパネルにアクセスしてメンテナンスできるように、エンヴェロップは見付が2mグリッドのフィーレンデールトラスになっています。ちなみに太陽光パネルのCO2削減貢献は、既存の研究棟との比較で14%ぐらい。残りは徹底した省エネ努力の組み合わせで、全体として60%削減しています。断面は実験室階と研究室階が交互に積層する構成です。実験室階は直射日光が不要なので、窓前であっても壁面状にパネルを配置し太陽光パネルの面積を最大化していますが、学生達がいる研究室階はルーバー状にして光が入り、外が少し見えるようにしています。またエンヴェロップと建物の壁面の隙間には上昇気流による発生し、加熱しすぎると発電能力が落ちる太陽光パネルを、裏側から冷却する効果もあります。逆に冬であれば、あたたまった空気がたまる場所になって環境的な緩衝帯を成しています。大震災が東京を襲ったときでも、この発電能力によって、学内での安全センターとして機能する予定です。基本的には鉄骨ラーメン構造に衝撃吸収ブレースをたすきにかけることによって外殻構造とし、震度7の地震でも柱梁構造が崩壊しないようにしています。本体とソーラーエンヴェロップの間は高さ30m×長さ100mあり、この施設を象徴する、空間垂直性の高いカテドラルのような空間になっています。
次は、恋する豚研究所です。成田から15分くらいのところにある、美しい農村につくられた、農業の六次化を進める施設です。この辺の風景は、台地にひだ状に入り込んだ谷津が水田になり、斜面部分には森が残され、台地の上は畑になるきれいなパターンを持っています。大消費東京の隣の千葉県では近郊農業が成立するので、農家はまだ元気ですが、それでも元々「農」の生業がつくり上げてきた地域の全体性が、少しずつほころび始めているようなところです。

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