平沼:最初に見せていただいた住宅ですが、どういう経緯でされましたか。

高崎:当時は、お墓の事情が社会的に話題になりました。自分は死んだらどうなるのだろう、どこいっちゃうのだろうといった死生観が出てくる中で、新興宗教がすごく流行りました。それから現実的に墓地が少ない、土地が少ないのです。それに対してのひとつの解答として創建したのが、生きているときにはリビングルーム(生の空間)、亡くなったらその人のお墓になる空間です。さらにはエネルギーを使わないです。エネルギーを使わずに快適に暮らしていきたいとか、商品住宅というのがかなり強く出た時代で、やっぱり自分らしく生きたい、自分らしい空間が欲しいって人が出てきた時代でした。

平沼:ラストハウスなのですが、お住まいになられているのでしょうか。

高崎:現在はね、物人アトリエになっています。

平沼:そうなのですか。毎日行かれているのですか?

高崎:鹿児島にあるので毎日は行けません。ここには世界中から若い人がたくさん来ますね。ここに来ると未発表作品がありますので、宝の山かもしれません。

芦澤:是非行きたいですね。

高崎:中に入ると静かですよ。自分がどこにいるのか分からなくなります。宇宙の果てにいるみたいな、本当に静かな空間です。

平沼:この池の中にいるのはなにですか。

高崎:錦鯉です。錦鯉の赤ちゃんが生まれて、今7匹ぐらいいます。これはドイツ語で言うビオトープです。自然生態系になっていて、鳥が飛来したり、カエル、メダカ、金魚、宇宙生まれのドジョウも入っているし、いろんな生態系が一緒になっています。そして、子供たちが遊びにきます。子供たちが水遊びしたり魚をいじります、お母さんが、ベンチに座って池をみたりとかしています。

平沼:若い人たちも多いので、こういうこの形態であったり、ここのこのかたちに行き着くプロセスをみなさん聞きたいと思います。例えば、こういう形態にした理由を教えてください。

高崎:建築をざっくばらんにゆうと、空間と形態です。建築という、建てるということは実在するという意味です。それは形態であり、フォルムです。建築を存在させるのは空間です。だから、空間は目に見えません。形態は触れば、固いとか四角いだとかだって分かる。その2つが大きな建築のテーマです。地方で作る場合は、そこの地域の人が大事に思っている山とか海とか川とか場所があるので、そこにまず建築を位置づけていきます。聖なる山にこの建築は軸がピタッと位置づけられています。そういうものを探っていくと、南九州にある古代の信仰の体系学に行きつきます。それは海と山です。海の向こうに浄土がある。山には神の降りてくる場所があり、海と山をつなぐ蛇行する道ができて、横に石が置いてあり、真ん中に土俵があります。そういう古代の宗教観を形態の中に置き換えています。もう1つは建築には距離があります。距離と角度があります。距離は、実際に実測したり資料で求めたりして、その距離感を活かせます。角度がついているのは、建築は全部聖なる場所に向かっているからです。角度をつけることによって、方向性をつけます。そうすると、このとんがっている部分はどこにつながっているのかが分かるわけです。この形は霧島とか指宿に向かっているなど、そういった大きな意味においての土地との関連性が分かるようになります。

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