平沼:これはなにですか?

高崎:上は現場で、下は型枠が出来たところです。この柱は約33m伸びていて、直径約90cmの柱です。それをコンクリートで石のように造ります。一見目地をもたない巨大な柱が、天に向かって伸びています。斜めに3本です。僕の建築のキーワードの縄文の数字です。奇数の概念ですね。もう1つは弥勒、369。アシンメトリー。そういうものをひそかに入れながら理念を作っています。具体的にいうと、建築は型枠の政策と、足場の作り方が難しいです。型枠を制しないと、コンクリートの建築はできないです。立体がこのようになっていると、足場をどう組むかの技術がないとなかなか実現できない苦しさと難しさがあります。これは公共工事です。日本の公共工事は入札で決まるので、職人さん選べませんので、コミュニケーションが大変です。そういった経緯で出来上がった建築物です。

芦澤:決まった職人さんを指定されるような方法はなされますか。

高崎:民間だとできますが、公共の場合はいろいろありますので難しいです。民間ではやっています。各地域の1番って人を集まってきて、日本の、世界のコンクリート芸術の最高峰を作りたい、これ以上のコンクリートはできないだろうというのをチャレンジしました。これは僕が初めて撮った写真です。キャンティーレバーで、さらにシェル構造が難しく、日本構造センターで審査を経て作りました。コンクリートのシェル構造では世界でも大きい方です。

平沼:下のランダムな柱は何でしょうか。

高崎:縄文時代の鏡みたいでしょう。これは山を象徴しています。山の上に建っている建築であることを強調するために、こういう山型に建っています。この建築は山の神殿であるということを証明、指し示すために、かつての古代日本人が作った古代遺跡の中に刻印されている文様を、建築の柱に活かしています。

平沼:この柱に玉子で上をふさごうとすると、許可をもらうまで、どのくらいの期間がかかりましたか。

高崎:確認申請では、地元では構造が全然わかんないから全く手のつけどころもわからず、当時はシェル構造の構造基準がなかったので、東京の建築センターで構造家に審査してもらい、許可がでました。

平沼:その期間を含めてすごく時間がかかっていませんか?

高崎:その審査に半年くらい時間がかかったと思います。

平沼:設計期間はどのくらいでしょうか。

高崎:行政の仕事は設計期間が決まっています。これは設計から完成まで約3年かかっています。ただし、行政を説得するのに1年半かかっています。九州で初めてのプロポーザルコンペをやりました。その前までは、大抵、設計者が決まっていましたが、それでは新しい時代は開けないし、建設業界がダメになるので、プロポーザル方式を行政に勧めました。偶然が重なり仕事をいただいたわけです。

平沼:もう1つ説明をお願いいたします。

高崎:これは木造建築です。私はヨーロッパに友達が多いので、ヨーロッパに行く機会が多いです。ヨーロッパの人から見たら、日本の建築イコール桂離宮で終わっています。中国からの仏教寺院がたくさんあり、日本の建築は桂離宮で完成を見たと思われているのです。そういう悔しい思いを長い間意識していく中で、日本の木造建築をきちっと世界に伝えたい、日本の木造建築はすごいぞ、あるいは日本の木造建築は現代的である、こういうことを世界に伝えたいという気持ちで、木造建築を追求しています。これは竣工した住宅です。4年半かかりました。基本的には素材が日本の神木の、檜、ヒバ、桜、松、杉を使っていて、古事記の伝説を活かしています。それを、建築的にチャレンジしてみたいと思い、そういうテーマのもとに造った建築です。木は、年輪をもっているので、コンクリートにはない難しさがあります。コンクリートはわりと木偶の坊でうんともすんとも言わないです。木は年輪があるので、深入りすると命をとられる、そういう木の怖さもあり、霊が宿ってしまいます。檜の木ですけども、それであの螺旋吹き抜けです。柱の周りに左と右に風を起こしながら柱をねじって持っていき、そうすると流動換気します。都会のど真ん中に建っていますので、環境は良くないです。普通は防犯も兼ねて、塀を建てたいとか言われるのですが、それでは街並みが良くならないし楽しくないということで、道路の際に水を入れています。池を作って、それが一種の防犯池になるわけです。隣近所子供や老人が、メダカを見に来たり、水を触ったりしています。

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