会場2:鈴野さんの作品を今日見させていただくと、人の個性がすごく表れてくような作品が多かったと思っています。そして鈴野さんの考えておられていることが、現代の都市に対してどうつながっていけるかというところを話されておられて、現代の問題は個性がないというところを問題とされているのかなという風に思いました。現代の都市の問題をどう捉えられているのかを、教えていただけないですか。

鈴野:先ほど東京の専門書店の件で、5万円で設計料込みで外に本棚をつくってくれって言われたんですけど、朝は出して雨の日は中にしまう、最初は家具でタイヤをつけるとか考えていたんですけど、南洋堂の壁を敷地と捉えると、溝がついているんですね。昔はコンパネでグリッドをつくって意匠にしています。コンパネでつくっているので、溝にコンパネが刺さるんです。壁に刺してくような本棚をつくりました。そうすると、今まで建築の壁って、街を歩いていても、他人の壁ですけど、みんなの壁になるというか、My Libraryになるように接せれるようになったんです。壁のスケール的な物が外に出て来て、そうすると急に自分も関われる壁になれるんです。そのプロジェクトがすごく印象的で、スカイデッキもそうです。香港の街を歩いていたり、海外とか見ていて、どういう街がおもしろいかというと、パーソナルなものであふれていたりとか、植物で育てたりとか、工夫されたDIY、そういうのが見ていて面白いなと思います。

会場2:ありがとうございます。

平沼:なんだかテレビ番組みたいでとても恐縮なのですが、学生の方も会場に多い中、月並みな質問なのです。建築とはどんな職業だと思われていますか?

鈴野:僕らの上の世代だと、芦澤さんも安藤さんとこで勤められていたりとか、安藤さんとか黒川さんとか丹下さんとか見ていて、建築ってすごく大変な職業だし、あんなビル建てるのに何枚設計図を描くんだろうかと思う訳じゃないですか。設計事務所に勤める時なんかも、お給料は低いし、修行みたいなものだし、そこまで建築家になれると思っていなくて、東京理科大に入った時とかも、100人いて1人なれればいいよと最初に言われます。みんなあきらめてプロデュースの方とか、広告のほう行ったりとかする。でもせっかく6年やって来たときに、僕も他のところに回ったり、プロダクトも好きだしグラフィックも好きだしとかもありましたが、そこまでやったので、建築、住宅1個設計してから考えてもいいじゃないかと思いました。少し大きいものとか作っていたらプロダクトとか家具とかにもいけるけど、そこであきらめちゃうと家具とかやっていると、建築にはなかなかいけないなと思って、それくらいのきっかけをもって建築ということもやってはいながら、今やっとようやくそういう風なことがつながってきたような気がします。

平沼:芦澤さん。時間が迫ってきましたが、最後にご質問ありますか。

芦澤:あっはい。今日、鈴野さんにとっては全部建築だとたぶん思われていると思いますし、僕も話を聞いて建築的だなと思いましたが、建築は逆にどこまで解体できるか、もっと作品を通して聞いてみたかったなぁってのはありました。もしかすると逆に建築を、既存の建築という、固定観念が出来上がっているじゃないですか。クライアントもいろんな観念が、もともと生活から生まれている観念もありますし、ライフスタイルもいろんな影響を受けて、特に日本の場合はいろいろ変わっていっていますよね。それを、建築家として、どう処理するといったら業務処理みたいな話になりますけど、どう扱われているかっていうのは最後にちょっと言葉だけでもお聞かせいただけますか?

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