平沼:質問挟ましてもらっているんですけど、建築家の役割ってどうお考えですかね。

北川原:月並みの答えになっちゃうけど、やっぱり社会には問題がいっぱいありますよね。その中で建築家っていうのはやっぱりハードウェアとしての観点からどのように調整したり解決していくのかっていうのを考えるプロフェッショナルじゃないといけないな、と思っていて。自分の内部から出てくるものをそのまま表出するだけでは、やっぱり建築にならないと思っていますよね。

平沼:うん。

北川原:僕は誤解されてる気がするんですけどね。

芦澤:アーティスト的にみられる。

北川原:なんか好きなことやってるんじゃないか、みたいに思われちゃうところがあったかもしれないけど、実は僕はすごく気が小っちゃくてですね、長野県の人って気が小っちゃいんですよ。いろんなことを気にしながらものを作りますから、調整したり最適解を考えていくってのは割と得意なのかも。

平沼:伊東さんも長野?

北川原:あっ、そうですね、伊東さんも長野ですね。

平沼:藤森さん。

北川原:藤森さんはもう自分の中にあるものをバーッと出しちゃう野性的な人だけど。

平沼:はははは。

北川原:北杜市が映ってますが、大学の研究室で受託研究って言うのを北杜市からいただいてまして、北杜市の小淵沢界隈を面白くしていこうっていうの研究しているわけです。ここに今映っているのが小淵沢の特徴なんですけれど、とても市民芸術活動が盛んですね。ものを作っていく時に、みんなでいろいろ考えようよっていうことで、JR小淵沢駅と小淵沢駅前広場ですね、これを研究室の方でコンセプトを考えてデザインをしたわけです。今、工事が始まっているところですね。この石垣がですね、僕が本当にうるさいこと言って、綺麗にちゃんと作るなと。不揃いの石を集めてきて、それをうまく組合わせていって、いわゆる野積みっていうんですけどね。昔は棚田とか段々畑なんかも小さな石垣を、農家の人が自分で持てるサイズの石を持ってきて積んで作ったわけで、それが原風景になってるんですけど。これは駅広の石垣で高さがある、4mぐらいあったりしますので、大きな石も必要でですね。小さい石や大きい石をいろいろ取り混ぜて、丁度今映ってるこのお兄さんが監督なんですけどね、この石垣の。すごくセンスがあってですね。本当に思い通りの石垣を作ってくれて、いい感じになりましたね。そういうプロジェクトやりながら、芸大の学生たちが小淵沢に行って、いろいろ面白いことを市民の人たちと、音楽祭みたいなのをやったり、いろんなまちづくりの提案もしたりしていて。商店街全部を真っ白に塗っちゃおうとかですね、それはちょっと無理そうなんですけど。これは多分やるんですが、これはいずれ壊す小淵沢駅のトイレなんですが、まず白く塗って、そこにフレームを作って、インスタレーションみたいなものなんですが。それをこのトイレだけじゃなくて、駅そのものも壊す前に真っ白に塗って、そこにフレームインスタレーションをやって、そのフレームは移設して新しい駅前広場に置きましょうという提案をしている。

芦澤:フレームは、どんな意味と言いますか、どういう仕掛けなんでしょう。

北川原:フレームのデザインは僕は一切口を出してなくて、学生たちが模型を何十個も作って。学生たちの話を聞いてると、あの辺って農家が古くからあるわけですが、その農家の家の形とそれから山の形、それを重ね合わせて一生懸命スタディして、ああいうちょっと不定形のフレームになったと。昔、ロバート・ヴェンチューリがアメリカで家の形のフレームをデザインしたことがあったけど、ちょっと僕はそれを思い出したけどそういうことは言わずに(笑)学生たちの思い通りのものを作りなさいって言って。なかなかいいなと思いますね。

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