安藤:6月10日に膵臓ガンと告げられ、悪いことに翌月の7月10日に山中伸弥先生と北野病院で対談を予定していましたので、これだけはやり遂げようと思い、当日に山中先生と18時から20時まで対談、20時から21時までパーティーまでを終え、翌日、朝7時から11時間の手術をして膵臓を全摘しました。まぁ、今日もこうやって元気にいますから手術は無事に成功したのですが、大変でしたが良いこともありました。

今は昼食後の90分間、読みたかった本を読む時間をいただけます。悪いことばっかりでもない。それから2年半が経過しましたが、身体がダルイやシンドイ、痛みも何にもない。
そして毎日1日1万歩は歩くようになりました。食事はね、食べるスピードが昔は早かったのですが、今はさすがに、35分から40分くらいの時間をかけて食べています。もちろん人生ですから、良いことと、悪いことがありますが、どちらも良い方に考えたらいいですね。

平沼:僕たちは普段から大阪にいまして、建築のことばかりに取り組んでいますから、安藤さんが大病をされた話しを耳にすることもありました。人間として生きていきますと、生存率0%という、人の多くは病気になられてお亡くなりになられることを知りながらも、どうしても僕たちのような低い年齢では、自分の身に降り掛かる実感がわかないでいます。
そしてお元気になられて、僕たちは大変うれしく思うのです。そして悪いことでも、良い方に考えるという、前向きな姿勢に考え方を正されます。

安藤: 70過ぎたら人生終わりかなぁと思っていましたけど、結構まだまだ元気に生きています。サントリーの佐治敬三さんが私に持って来た、作詩家 サムエル・ウルマンの「青春」という詩があります。ここに描かれていたように、何歳になっても、夢や希望を持っている限りその人は青春を生きている。。もちろん強盗や犯罪はいけませんが、人生のあるうちに、ギリギリのところまで勝負しなければいけません。

平沼:はい!

安藤:私は高校3年生の時までボクシングをやっていました。ボクシングと建築、どんな関係がありますかと聞かれます。当然直接に建築とボクシングはあまり関係ないんですが、リングの中では誰も助けてくれないじゃないですか。人生もそういうものですね。

平沼:終了時間がもう過ぎている中で、そろそろ時間が迫る中で、安藤さんお聞かせください。今後、どんな建築をつくりたいと考えられていますか。

安藤:いやいや、建築をつくるのは、依頼あってのことです。きちんと面白くなるかどうかという、依頼の内容をみてつくるくらいです。今年の7月にオープンしたのですが、北海道で大仏を丘の下に埋設する設計をしたのですね。平地の上に鎮座した既存の石造りの大仏が有難くないので、何とか面白くして欲しいと依頼を受け、思い切って丘の下に埋めてしまう建築をつくったところ、、中国国内のインターネットで話題になっていたようです。それからこの4ヶ月で4件くらいのお寺の依頼が中国から来ました。(笑) うちはお寺専門の設計事務所と違うのですがね。

会場:(笑)

安藤:中国では、お寺の計画に寄付が集まるようで結局、約1万坪くらいの大きな宝蔵庫などを4つ取り組んでいます。

人の心に残る建築をつくりたい。
確かに「住吉の長屋」は多くの人が住み難いだろうと言いますね。実際の中庭はとても小さくて、雨のかかる外部空間の大きさは実は大したことないんです。だけど私は、冬は行かないでおこうと思っていましたよ。寒いと文句言われるから。(笑)

芦澤・平沼:(笑)

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