山下:はい。僕の回答は2つあります。1つめの理由から話しますと、僕は設計事務所 アトリエ・天工人の代表と同時に、いくつかの団体の代表ですが、それぞれ20人弱のスタッフたちがいます。彼らスタッフたちの次の仕事につなぐような取り組みをはじめました。
同時に大学で教えているから分かるのだと思いますが、現在、学生の殆どは大手企業への就職志向です。本当に建築が大好きで、建築という分野で人生を生きようとする学生は多くいません。それは建築をはじめ、一分野に興味を持つ層が薄くなりはじめているのだと思います。そのような中で、僕は世界と、うちのスタッフたち、若者たち、教えている子達がどうやって建築を通して食べて行けるのだろうか?まずはそんなことを考えはじめた。
つまり、皆が共感するような社会的な取り組みができるのだろうか?とずっと考えていました。そして、高齢化施設をやることというのは、世界中で日本がはじめて知ることになり、高齢化社会としてのトップでいるからこその挑戦があると気づきはじめました。

そのきっかけはクライアントとの対話です。現在、僕は半分以上のクライアントが外国人です。海外の人はもう日本の禅の考え方や、日本の高齢化社会に対しての取り組み方に対して、もう既に大変な興味を持っていました。「高齢化」を扱うということは、建築というハードの話ではないのですね。要は、生活も含めて建築も含めて人も生活も一体となったものを建築と呼ぶとすると、それはまだ、つくり上げられていない。それを作り上げていくと、学生やスタッフたちは生きていけると、そのための僕はベース作りをしようと、ある時から取り組みはじめました。

建築家は社会をデザインする仕事。
社会をデザインするのは、建築家が最も適任である思っています。

文系の大学生は、今も昔も遊び呆けても大丈夫。(笑)でも、建築学生は中々、遊べない。
僕はごめんなさい、学生時代に遊んでしまいましたが、とにかく課題を通して、多分野の知識を通して広くいろんなことをやらなきゃいかん。僕は遊んだけれども、その後本を読みました。哲学を読まんといかん、アートを知らんといかん、社会の常識を知らんといかんとか、いろんな体験や勉強の経験を通して、初めて建築がつくれるということが分かった瞬間、面白いと思うと同時に、相当、大変だと感じました。 一級建築士の資格をとっても、足の裏のご飯粒って言われるぐらいの報酬程度です。食えなかったです。それでも、僕は社会をデザインするのが、建築家だと思っているから、やっぱりそれを若い子たちにもっと認識してもらって、もう少し世の中が建築家を敬い、活躍を期待するようなものにしたほうがいい。僕は建築家だから、それを現実化するしかないと思っています。僕が、これが建築家だよね、こんなことをやるのが建築家なんだよねといい、決してオーナーになりたくもないですね。これだけ忙しくて、これだけ設計で食えないからじゃなくて、設計もあるし、いろんなオファーをいただけているけれども、僕はオーナーまでやって何かを伝えたいというのは、それを僕が理想とする今オーナーがいないので、自分でやるしかないと思ってやっています。
学生諸君。建築家は猛烈に大変な職業だけど、滅茶苦茶、おもしろいし、かっこいいです。必ずベース作りをして、君たちが次の時代を担うような、建築家像をぜひ、つくり上げてほしいです。社会をデザインするのは建築家だろうとみんなが思う、それを言い続けないといかんと思っています。

司会:山下さん、芦澤さん、平沼さん、ありがとうございました。

平沼・芦澤:ありがとうございました。

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