平沼:建築を考えるときに、結構2つは芦澤が言ったように対照的になっていて、素材を突っ込んだタイプのホールと、構造をより明快に見せた住宅と。何が好きですかね?建築を作る、構造のことからこうやっていくのが好きとか。

永山:どっちも好きなんだと思います。だから、インテリアもやるんですけれども、インテリアだと構成っていうよりは素材から決まる時もありますし。両方とも、どっちがいいとかじゃなくて。素材から決めることもあれば、構成から決めることもあるし。その時々ですね。

平沼:なるほどね。問題なくね、ふわーんとやっていっている感じが僕らにはあって。ないですかね?

永山:問題?

平沼:問題なくやっている感じは、勿論あるはずだと思っていて、ないですか?問題を感じること。

永山:いつもコストが出るとまず、第一関門にぶち当たっていますけど。それは案を作るまでっていうことですか?

平沼:案を作って、設計をやっている途中でコストの問題であったり。

永山:そうですね。結構、今回持ってきていないんですけど、チャレンジングで使ったことのない素材を昔結構使っていたので。例えばルイヴィトンの光学フィルムであったりとか。その時は実際誰も扱ったことのない素材なので、もうゼネコンさんにも全員全否定されて、やめろ、みたいな。でも私、これで選ばれている建築家です、みたいな。これやめたら、もう終わりじゃないかみたいなことで、それを覆すために大変だったんですけど。やっぱり作り手側もそうですし、クライアントもそうですし、見たことないものを作るときに、まだ誰も想像したことのないものを説明するのが大変ですよね。そして、それを理解してもらって受け入れてもらい作ってもらう。そこまでをやっぱり共犯者になってみんなでよしやろうというところまで持っていくのは、そこにすごいパワーがいるなと思いますね。

平沼:多分外部で見ていると、うまいなと。

永山:えへへ。そうですか?

平沼:ふぁーと言っているんじゃないかなと思って。実はそんなことはなくて、かなり…。

永山:いやもう、大変ですね。最初は本当、独立した当初は、いつも問題にぶち当たると、青木さんに電話しようかな?みたいな。いや、でもこんなことで電話しちゃいかんみたいな。自分の中で、ミニ青木って呼んでいたんですけど、ちっちゃなミニ青木みたいな、目玉のおやじみたいな感じで。まず、この仮想青木に聞いてみて、みたいな。それで解決できれば電話しないで、でも解決できない時だけ電話したりとかして。

平沼:教えてくれるんですか?

永山:教えてくれます。

平沼:優しいんですね、青木さん。

永山:優しいですね。本当困った時はどうしたらいいんですか?みたいな。今考えるとそんなことで相談してたなって感じですけど。でも、最初はクライアントとの関係の結び方も分からなかったので。

平沼:なるほど。では、もう一作。

永山:はい、これは構成が強い方かもしれないです。明るい窓っていう、テナントビルです。丁度、住宅地と商業地の狭間にあるテナントビルで、周りが住宅ばっかりなので、スケール感と雰囲気としては、家っぽい感じの窓で構成して、周りとあんまり調和を乱さないように考えていこうと。図面を見ると分かるんですけど、結構平べったい土地で、それで『明るい窓』って言う題名をつけたのは丁度私が、学生時代にロンドンに行った時に道を歩いていたら、隣接するビルの窓から自然光が差し込んできたんですよ。えっ、なんでここから自然光が道に入ってくるの、と思って、壁をよく見たらその裏が駐車場になっていたんですね。それでヨーロッパの街並って、言ってみれば道路がインテリアみたいな。そこをすごく重要視していて、それで建物は壊すんだけど側だけ残して、上見たら2つその道を両側挟んでいる壁の上に構造が走っていて、どうにか壁を自立させていました。壁がインテリア化されていたんですよ、外装が。すごく面白いなと思って、一回それをテーマにしたいなと思っていたんです。道路側は窓のある壁が建っていて、道と反対側の奥の壁は一面ガラスにして、この建物を通して自然光が明るく見えると。だいたいテナントビルもなんでも、昼間って窓を見ると暗いじゃないですか。いつでも明るく見える窓って結構ないなと思って。明るく見える窓を作ってみようということで、こういう構成にしています。この敷地は接道面の長い菱形の土地です。これ、うちの子です。ちょうど真っ二つに、道側は壁で覆われて、こっち側は普通にガラス張りの建物で、光が満ちて、道側に溢れるみたいなことを考えています。そのために、すごく変な構造にしています。構造ほとんどを道側の方で持っていてかなりごついビルトHになっています。反対側は垂直荷重だけ持たせているので、結構細い柱です。こっち側が壁、こっち側はガラスっていう風に明確に分けています。この敷地が面白かったのが、ちょうど街区の切り方の方向がこの敷地を境に変わっていて、裏側の家がベタッと面する家がなくて、全部斜めに面している。なので、すごく抜けも良い。中に入ると不思議な斜めの抜けが気持ち良いんです。そこも活かせたかなと思います。これがちょうど外部階段です。もう一つ吹き抜け的な所があるんですけど、ちょっとトリック的に鏡を使って、透けて向こう側から明るく見えるようにしています。

平沼:もう一題、お願いします。

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