鈴野:これは石巻工房のプロジェクトで、震災後、何ができるかなとみんなで話している写真が、あって、まずは何かを与えるんじゃなくて、そこで自分たちで直していけたりできるような方法を作ろうと思いました。魚を与えるじゃなくて魚の釣り方を与えるんだというような感じで、石巻工房をつくったんです。みんなが躍り出て少しでも直せば、少しでも一日でも復興が早く進むんじゃないかというようなことで、ビスを打てばこのベンチをあげますと言って、もらったりとかしました。被災地に仮設住宅に行って、こういう縁側をつくったりです。みんなも少し手伝えばもらえたりします。この人は二代目の寿司職人ですけど、全部流れちゃったあとに、買ってきたのがこのコンパクトドライバー、インパクトドライバーというDIYの自分でやることが好きな人です。買ってきたはいいけど電気が通じてなかったから動かなかったという落ち。(笑)それで、まず工房をつくりました。僕らがデザインのものを渡して、石巻の人なのでプロではないです。職は生むっていう意味で最終的には産業をつくりたいなっていうような意味もあります。何周もしているぐらいな人がこういうシンプルな家具な方が面白いみたいになって、買ってくれるんです。こんなショップに卸しているんです。こういうものを提供して今石巻工房をつくっていっています。これはAAスツールっていう、平沼さんが通われていたロンドンの建築学校AAをもじっているものです。

一同:(大笑)

平沼:わっ、ありがとうございます。(笑)

鈴野:Aの形をした二つがあって丁度おしりと同じサイズです。友達が来たらぱかって分けてあげられて、こんなデッキ材一本から丁度出来ているような椅子です。

平沼:でも、これ連結方法がすごい。

鈴野:はい。ベンチにもなるし、天板にもなるというシンプルなAAっていう形ですね。

平沼:鈴野さんは優しい方ですよ、芦澤さん。

一同:(笑)

鈴野:日本一有名なシャッター街に戻すっていうのが復興じゃない訳で、自立できる産業をつくりたいなってだんだん考えるようになって、今は石巻が見学に来たらそこで働きたいって言ってくれるような場所になっています。それが今僕たちのAAスツールとか、物からそういう工房が出来て、工房が都市とか石巻に与える影響がすごく大きくなっています。建築が震災起きて都市計画って考えていても、なかなかその通りに時間だけが経っている中、石巻が逆に前よりも面白いっていうような現象が一部では起きはじめているのが良いなと思いました。

平沼:鈴野さん、建築って何ですか?

鈴野:環境とか、人の生活とか、全てに重なっていくものだと思っています。

平沼:建築って人から少し離れすぎて、大きくなりすぎたのかもしれませんね。話を聞いていてそういう風に思いました。それでは、会場から質問をどうぞ。

会場1:大阪大学3年生の菅谷と申します。鈴野さんは空気の器という作品や指輪のというプロダクトの話しから、建築以外のことに、たくさん関わられていると思うのですけれども、ご自身にとって自分の職業は何だと思われていますか?

鈴野:分からなくなる時もありますけども、最近は、建築的な思考を持って建築家として違う分野の物を見ると、リングとかもジュエリー作家からでも出てこないような発想を考えるね、と言われたりします。(笑)そしてたとえば住宅をつくることを考えると、引き渡した時が一番じゃなくて、床の色があみ色になった30年くらい経った方が良いっていうふうなものをつくりたいなって思っています。僕の今の職業を気にするのでなくて、長い期間で見返した時に、建築的な発想から、いろんなことをやっていくと、いろいろなものの捉え方が面白く見えて来て、今の自分の職業というよりも大切なことではないかと思っています。でも軸足だけは建築にあって、今は、職業をなんとも言えなくなっていますけどね。(笑)

会場1:ありがとうございました。

平沼:(笑)ありがとうございました。もう一方おられますか?

>>続きへ


| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | NEXT