妹島 : 次は不安定なプロジェクトですけれども。1年と何か月かやっていて、モスクワの郊外に新しい街をつくろうとしているプロジェクトです。私は駅前広場の辺りを担当していて、こういうものをつくろうとしているのですが、駅のこともアドバイザーのようなかたちで関わっています。この駅から電気自動車や動く歩道なんかが始まって、この辺が街の中心地になります。こっちが大学でこっちがオフィスです。駅前広場で、新しい街なのでランドマークみたいなものも求められました。駅からきた人が周回バスに乗り換えたりする場所でもあります。私たちが提案したのは半球に近いものです。何をランドマークにするかというときに、スカルプチャーではなくて、モスクワはすごく寒いので気候を目に見えるようにして、いつも街の表情が変わるような場所をつくります。街の大きなエントランスホールみたいなもので、入ってきたらそこにもともとある樹木と、それから湿地帯が広がっています。そういうものと、アートセンターとかバス乗り場が入っています。街のショールームみたいでもあるし、乗り換えたりする場所で、それと自然がまじりあったようなものです。構造はまだ検討中なのですけども半径は230mです。ドームはバッファで、温度も自然エネルギーを土に蓄積します。それによってコントロールして、-25〜-30℃の冬でもこの中は平均5℃くらいになると。夏は日差しが照ったときは雲を浮かべて、高いところから熱い空気を抜きます。完全なインテリアというよりはあるバッファで、その中につくられるアートセンターなどは、普通の建築設計のときとは、風圧とか負荷がちょっと違ってくるわけですね。だからこのドームは環境をつくっているような、建築をつくっているような、そういうわからないものになったらいいなと思っています。クライメートエンジニアの人と組んでやっているのですけど、これはどういう状況が起こるかとか。夏になったらある操作をして雲を浮かべたらそれが日陰をつくりますとか、湿度をコントロールして雲を雨で落としてしまうとか、そしたら湿度が高くなって虹ができるだろうとか。冬は横から低い光があたって違った光り方をするだろうとか、水をどう使うかということとか、いろいろなことを話しています。

最後になりましたが、今年の夏にできあがろうとしているルーブル・ランス美術館です。フランス北部の炭鉱の町です。私たちが提案したのは、こういう三角形の変わった計画地なので、大きな美術館をつくると変な場所ができてしまいます。ある程度小さなヴォリュームに分けて、ここのランドスケープに合わせた建物にしていこうと計画をしていきました。エントランスが真ん中の部分で、65m×70程度。この中は図書館とかVIPルームとか食堂とか子供たちの部屋とか本売り場とかそういうものが入っています。こっち側が常設展示で、こっちが企画展示です。紀元前4,000年から19世紀半ばまでがルーブルのコレクションなのですが、パリのルーブルは大きすぎて時間がかかります。ここでの私たちのアイデアとしては、時間のギャラリーといって、それをずっと時間順にみる。ここにきたらちょっと休憩。それに対して企画展示は何かがクローズアップされる場所。1回目はルネッサンスと決まっているのですけど、場合によっては、作家がクローズアップされたり、エリアがクローズアップされたりということになるのです。一番こっちにシアターがついています。綺麗な場所なので、自然に入りこんでいくような場所になります。これはエントランスホールです。ルーブルの人が展示するときに、ギャラリーで古いものを保存してみせるような見せかたではなくて、現実(外部)とつながるということが重要だといって、トップライトを主張されました。上にルーバー、下にルーバーというふうに二重にカットされますので直射光は入らないのですけど、明るいところと暗いところをつくる。最初のほうは昔のものだから彫刻が多くて、最後はフランスの大絵画でおわるわけですけど、時間順にずっと歩いていって、それによってエリアの変化がわかる。そういうことを体験して、最後の小さいガラスのコーナーに入っていくと、その先にいま自分たちがいるということを感じてもらうような美術館にしたいと思いました。この敷地は美術館が19世紀半ばまでのコレクションが終わった後の100年間、産業革命の頃炭鉱で栄えた所でした。この庭の中にはこの街の歴史を伝えるような現代アートが置かれ、その先にランスの街の今の状況が見える。大きくみるとずっと片流れで、この土地に合わせたものになっています。ここからこのままどんどん低くなっていっているのですけど、トポグラフィに合わせた高さと、四角ではなくてちょっとカーブしています。アルミを貼って、ランドスケープに消えていくことを目指しながら、つくっています。この写真はそのモックアップですね。
今現在は、遅れ気味な工事をみながら、はらはらしながらつくっているところで、今年の夏くらいにできて、年末にオープンする美術館です。

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