平沼:お聞きしたいことがあります。建築をなぜやめないのですか。唐突ですけど。

平田:なぜ建築やめないのかは、わからないですね。

平沼:楽しいですか?

平田:楽しいですけど、やっぱり何だろう、意味があることが出来ないと、やっている意味がないなと思っています。当たり前ですけど。ですので、どうにかしてある影響力をもった建築を作りたいと思っています。東京とか、高い所から上って見ると、自分のやっているプロジェクトって点みたいなものじゃないですか。この点が、例えばジワッと広がるようなことがあるんだったら良いし、影響力あるんだったらやって行けると思うんですけども、それが夢なのかもしれません。単に宣言としてだけ言っていれば良い年齢を超え始めているので、こういう質問はとても難しいですね。

平沼:会場からも質問いいですか?

会場1:レクチャーありがとうございました。「からまり」というのが大事にされていることだと思うのですけど、そのからまり方っていうのが、「からまる」という受動的な面と、「からむ」という能動的な面があって、そのバランス感が自然ではない、不自然に感じてしまうと思うのですけど、それは平田さんが建築を作る時にどのようにバランス感を考えていますか?

平田:そうですね。英語でtanglingって言ったらことわざでit takes two to tangleっていう 言葉があるらしいんですよ。洒落みたいな。2つのものがないとからむことはできないと。 いろんな意味を含んでいるとは思いますが、tangleって調べると大体人間関係のもつれとかそういうの出てくるんですけど、大体もつれるというのは不思議ですよね。ものっていうのは、常に相互作用のなかで現れるものだと思うんですよ。だから、バランスを考えるっていうのと合うかどうかわからないですけど、 建築 ではからまりそのものを作ることはできない 、「からまりしろ」なら作れるという考えを持っています。からまりあった状態が生まれてほしいとは思うけど、からまりそのものを作 ろうとしてもそれは嘘のからまりになるんですね。それはアレグザンダーが「都市はツリーではない」といったのとほぼ同じ話です。 都市そのもの、あるいは からまりそのものをデザインすることはできない けど、からまるきっかけを作ることはできるっていうのが僕の立場です。だから 「からまりしろ」っていう言葉を使っている。 「しろ」だったら作れる。その「しろ」、つまり きっかけをより多く含んだ状態はいろいろ発見していけばいいのではないかっていう考え方ですね。

会場1:ありがとうございました。

平沼:もう一人いいですか?

会場:時間ない中、二つほど聞きたいのですけど、一つ目がform formのブリッジのことですけど、屋根が床になったり床が屋根になったりしていて、あれは手すりをつけてしまったら見た目が良くないと思うんですけど、絵では手すりがなかったのですけど実際はつける予定だったのか。二つ目が建築空間における表と裏についてなにか考えが、もしあればお聞きしたいです。

平田:そうですね。台湾のコンペの件は、一応パースに手すり入れているんですけど、薄過ぎて見えないです(笑)。

平沼:それって、ガラスですか?

平田:半分透明です。ただガラスの手すりって あまりすきではない、なぜかというと風が抜けないからです。網のようなものか、エキスパンドメタル のようなものを作れればいいかなと思っていたんですけど、実際にできてみるとそんなに気にならないものなんですけど、パースに手すりを入れるとすごい気になるものな のでこのぐらいにしているけども、実際はもう少し手すりしないと怖いですよね。下に船とかとおって、結構高いですから。このぐらいの建物の塊の強さだったらこのぐらいでも大丈夫とかバランスがあると思っていて、やり方はいろいろあると思います。
もう一つの質問で、表裏ですね。裏を作らないっていうことにはあまり興味がなくて、裏は裏として好きなんですよ。裏があるから表があるという感じ。それを無くしていこうという感じは結局均質な感じしかないと思っていて、だから暗いところもあったりしたいなと思う。例えば模型写真とか撮る時でも、暗いところを作るようにスタッフに言いますね。 それがある程度混ざっていくことで面白くなるのではないかと思います。今日直接お持ちしたプロジェクトではないですけど、メビウスの輪みたいに表と裏が混ざる感じが好きで、表があって裏もあるんだけど、でもどこでそれらが移り変わっているのかよくわからないという感じはすごく惹かれますね。

会場2:ありがとうございました。

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