平沼:なるほど。それでは次のプロジェクトを紹介してください。

谷尻:はい。これ広島で平和大橋っていう国際コンペがあったんですけど、こう、あやとりみたいな構造で、こう、頼まれてないんですけど、勝手にこう、なんていうんでしょう。両脇にこうコンクリートの重たい公園を設計して、それでこうテンションかけて90mの川幅を30cmぐらいの、こう、薄い谷尻:橋を作るっていうプロジェクトにしたんですよね。

平沼:これ公用ってことですね?車はないんですよね?

谷尻:公用です。今は真ん中にイサムノグチさんが作られたこの橋があるんですけど、その両脇に歩道橋を作るというコンペだったんですよね。そうなんですよ。こんな感じで。で、手すりを耐震壁の要素を使って揺れを止めるっていうのをやってですね。で、ただわざと揺れを設計するっていうのをやったんですよ。渡った記憶を持ち帰ってもらうために、身体がギリギリ感じる揺れを設計して、平和記念公園に来た人たちが渡るので、そういう過去の出来事を持ち帰るという意味でも記憶に残る橋を作ったほうがいいんじゃないかというプレゼンをして、ファイナルに残って内藤さんが公開プレで、話すじゃないですか、そしたら内藤さんが「問題作が出てきましたね。」って言って問題作な空気が漂って負けました。

芦澤:内藤さんは何を問題って言っていたのですか?

谷尻:やっぱ揺れるって橋にとってはNGなワードじゃないですか。でも、こう、揺らすと揺れるは違うじゃないですか。それで日経アーキテクチャでも、なんかああいうことを審査委員長言っちゃだめだよねって書いてくれって言ったんですけど、なんかさらりとした文章になって、日本のジャーナリズムはそんなもんだなと思って。

芦澤:ちなみに、構造は誰か、相談されたのですか?

谷尻:今川さんです。
それで日本は駄目だと思って海外に目を向けて、これポーランド博物館のコンペを出して、
土を使って、なんて言うんでしょう。平らな場所も、こう掘るとひだができて、表面積が増えるので、こうすることで太陽熱を蓄熱させながら、パッシブに博物館をつくるということを出しました。そうすると、全部上が、公園になるので、公園は、目的なく人が来てくれて、博物館があることとの偶然な、関係性を持たせるような、プロジェクトにしようということを出して、結構、アラップと、ずっとやって、数値的なものもエンジニアも全部やって、あの環境的にも、エネルギー効率もすごくよくて、出したんですけど、A0を3枚ぐらい、英語も対してできないのに全部英語にして出したんですけど、ある日、事務所にA0、3枚が帰ってきてですね、そこに書いてあるのをみたら、事務局に届けたけど、不在表出してたけど取りにこなかったから返しますって審査されずに帰ってきた。

芦澤:それは、悲しいな。

谷尻:日本も駄目だけど海外も駄目だなとそのとき思いました。残念なプロジェクトです。

平沼:いやいや(笑)。これ、この平面図ですか?

谷尻:はい。博物館の平面図ですね。

平沼:1階と2階ということですか?

谷尻:地下に2層掘っているのです。これは、幻のコンペ案なんです。

芦澤:これ掘って土のまま仕上げるってことですか?

谷尻:あのソイルコンクリートにしようかなと思ってました。
これは宮島、広島ですね。展望台をつくる、指名コンペでしたね、広島若手5人の。和風な、展望台を作るって言うことが要項にあったんです。山の上に展望台をつくるんですけど、登ったときに見た風景がこれで、もう展望できていたんですね。展望台、つくる以前に展望できていて、展望いらないんじゃないかなと思ったんですけど、でもいらないよって出しても勝てないので。それで、透明な展望台をつくろうと思ったんですね。和風なものよりも風景に調和する、と思ったので。透明、というのを、水って、あるときって透明っていうんですけど、なくなると透明と言わなくなるので、何もないことを意味するんじゃないんだ、ないんだなということに気づいて、こういう、霧のような、展望台をつくりだんだん近づくとこう、建物になり、さらに近づくとこう、柱梁があって。

芦澤:柱は、丸鋼か何か?

谷尻:えっと、エキスパンドメタルです。これを折って構造体をつくるっていう感じです。僕ここに左手に持っているんですけど、見えないんですね。

芦澤:ほとんど分かんないですね。

谷尻:人間のこう、目の、フォーカス合う、合わないがあるので、その原理を利用して、遠くから、えっと、展望台みたときにはこう、霞んで見えるようなつくり方にしようとしました。これは、去年かな?えーと、群馬県で、富岡にある駅のコンペで、隈さんが審査委員長でした。このときは隈さんの足元をすくおうと思ってやったんですけど、なんか負ける建築って隈さん言われているんですけど、なんか、あまり負けている気がしなかったので、やっぱり、これ、これこそが負けるって言える、最高のものなんじゃないかっていうのを、提案しようっていうので。

芦澤:好戦的ですね(笑)

谷尻:最大の敬意をもって、足元すくいたいなって。じゃないと、なんか、審査委員長側も、推してくれないと思うんですね。自分の力量の中にあるものが出てきても、なんか、僕だったら選ばないかなと、思うので。屋根だけを、設計するだけということで、このときはやって、2位で負けましたね。

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