谷尻:部屋の中まで自転車持って入れるようにするのと、部屋の前に整備できるような、少し余裕を持たせているようなことをやっていますね。自転車屋さんもこの中に入ります。これはこの間プレゼンしたばかりで、これから設計に入っていくようなプロジェクトです。淡路ですね。今は東京、埼玉と大阪に工場と本社、本社は大阪ですけど。それを全部、本社と工場の機能を淡路に移すっていうプロジェクトです。敷地が岩盤だったので、ちょっと掘らないといけないので、できるかどうかをちょっと協議中です。トンネル掘るときって爆弾で掘るじゃないですか?それで掘ってですね、掘って出た岩を積んで外壁にするっていうようなことを提案していて、室内もこういう岩肌がそのまま現れながら、工場を造るっていうようなことを今やろうとしています。

芦澤:上はガラスですか?

谷尻:ここは白い壁です。急に閉じているのに開放感が生まれますよね?それはたぶん、この辺の自然な岩があることによって、この関係性でただの白い壁が開放に変わるんだなっていうようなことを発見したりですとか。会社見学に毎週いろんな人が来られるんで、そう考えると工場というよりは、実はミュージアムのような機能を持っている工場だっていうことで、この工場見学をどうやってアートの鑑賞のように見てもらうかっていうことで、僕らの中では、ミュージアム、ミュージアムっていうふうに、事務所の中では呼びながら設計しています。

芦澤:なるほどあえて言いながらね。工場だから、とかそういう言い方よくないですよね。僕も工場をしているからわかるけど、工場やっている意識ではデザインしてないですよね?

谷尻:そうですね。人が気持ちよく働ける場所ですね。これは斜面に社員も一緒に造るっていうようなプロジェクトです。

芦澤:淡路のどの辺ですか?

谷尻:安藤さんのウェスティンの隣の敷地ですね。これはアート作品作ったもので、わりと自然って移ろいがあるのですが、人間が作ったものは移ろいがないなといつも思っていて。人間が作ったもので何がうつろっているだろうっていうのをいろいろ考えたときに、時間と温度はうつろっているのかなって思ったんですよね。それで、温度計に着目をして、数字と目盛を取って、それを横に引き伸ばせたらいいなと思ったんです。こんな感じで、夏は水位が高くなって、冬は水位が低くなっているような水平線の絵が、季節の変化だとか1日の温度変化を教えてくれるような作品を作ろうってことにしたんです。でも、温度計を平べったく伸ばすことは技術的に絶対無理ってことだったので、温度計の液玉の丸いところを全部職人さんにまっすぐにつくってもらって、300本並べて作ったりしました。

芦澤:これ、アートとして作ったんですか?

谷尻:そうですね、アートとして。展示をする機会がちょうどあったので、展示させてもらって。今は家に飾っています。
これは最近出来上がった住宅ですね。もともと、こういう和風の2階建てだったものの屋根を一度取り除いて、庭がすごく広かったので、新しい屋根だけを架け替えて、庭だった場所に自分のもともとの家の外壁を見ながら生活するリビングを造ることで、外に限りなく近いリビングを造るっていうコンセプトです。これ工事中ですけど。

芦澤:改修ってことですか?増築?

谷尻:減築と増築が混ざっているような造り方にしています。こんな感じですね。これが、もう丁度ほんと出来上がったばかりですね。

芦澤:谷尻さん、住宅何戸造りました?

谷尻:100戸くらい

平沼:すごい。

谷尻:これもほんとちょうど、昨日竣工写真撮っていた物件で、これ一続きでずっとワンルームなんですけど、階段がだんだん広くなったところが部屋になったり、狭くなって通路になったり、そういう揺らぎの中で空間を作っていくような住宅が出来上がったばっかりです。つくりはRCです。

芦澤:質問いいですか?いろんな方向性ありますよね。おっしゃるように多様性とか環境的なところも突くし、もっと空間的なところもいくし、間のコンテクストを読みながらやってくし、手法がいろいろあるところがおもしろいなと思っているのと、ただやっぱり最初にいろんなイメージというか、キャッチされているああいう日常的なことの紗々に読み替え、そういう延長に建築をされているなぁというところがすごい感心をしたのと、新しいアプローチなのだろうなというのは思いましたね。質問になってないですけど。

平沼:谷尻さんは建築を設計していてどんなことに問題を感じていますか?

谷尻:自分自身においてですよね?それとも社会においてですか?

芦澤:両方聞きたいな、社会的なことも。

谷尻:社会的なことでいうと、どちらかというとやっぱり今までは、使う人のことをあまり考えずにできたものって多かったと思います。実際のところ。でも、使う人に耳を澄ましたほうが実はいい建築できたりすることにも気づいて、もうちょっと僕らは耳を澄ませなければダメだなっていうのを常日頃感じはじめています。個人においては、ものを作るというより、事務所の環境のことにすごく今は意識がありますかね。なんかアトリエ事務所ってスタッフがボロボロになるじゃないですか?もちろん、我が事務所においてもそうなのですが、もう少し環境を、どうやればよくなるのかな?と言うことをすごく最近は考えていますよね。

芦澤:あ、それ僕も考えています。

平沼:スタッフの方とのやり取りはどのような関係性って進めているのですか?

谷尻:みんなでやりますね。僕も提案しますしスタッフも提案します。それで良いものでやるって感じですね。

平沼:でもね、谷尻さん。広島にはほとんどいないようじゃないですか。(笑)

谷尻:(笑)実はですね、スカイプをしたりしているのです。あと、社内ツイッターやっています。こういうことが大事だよねとか、このウェブ見ておこうねとか、写真送ってみんなで共有するとか、そういうのはかなりマメにやっていますね。今こういうことが大事だとか、リアルタイムに進めていきます。


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