平沼:谷尻さんにとってデザインとは何ですか?
谷尻:なんですかねぇ。割と普通なことですかね。みんなやっているけど、デザインって言ってないだけのような気がしますけどね。なんか、お弁当にどういう風にこう何を詰めるかもデザインじゃないですか。ひとつの野菜をどう切るかもデザインでしょうし。ただそれをお金をもらってやっているのかどうかの違いだけで、割と感覚的に意識すればみんながデザインしているとも言えるんじゃないかと思います。
平沼:うんうん。前回、石上さんのときには時間がなくて、会場から質問が取れなかったのです。少しだけ質問をとってもいいですか?
谷尻:はい。でもこの間の空く空気が嫌ですよね。でも僕はこういう聞きにきたときは質問しようと思って聞くことにしているんですよ。これ逆にアドバイスですけど、そのほうがすごい話が入ってきますよね。僕はそういう風に自分を訓練しています。だから、その方が、読み解く力も、増えますし、この機会、もったいないですよね。
平沼:阪大の教え子がいるので聞いてみますね。
サンドラ、Do you have any questions?
Sandra:Good evening. I would you like to ask, which among the project is your favorite? Which one do you enjoy most? And why?
ニコル:谷尻さんご自身、今日紹介してくれたどのプロジェクトが一番好きで、その理由は?という質問です。
谷尻:難しいですね…。無いと思います。すごく言葉を選ばずに言うと、例えば良いアイデアが生まれてこれがすごく良いなと思うんですけど、次の日には飽きているんですよね。ずっと飽き続けているというか。飽きるっていうのが、そこに興味が無くなるということではなく、もっと良くなるんじゃないか、ということを探し続けている感じです。だから、そういう意味で、これが良いって安心がずっとできない状態ですね。
芦澤:そう、こないだ僕もインタビューあって、代表作はなんですか?と言われて、ありませんって言ったんですよ。自分で、自分で評価する代表作ってまだないな、と思って。
谷尻:はい。なんかそういうものを、つくりたいですよね。
平沼:谷尻さんにとって、特別性みたいなのはないのですか?
谷尻:プロジェクトでですか?特別性…そういう意味では全部、特別な感覚はあると思いますけどね。
平沼:そのときはめいっぱい100%でやっているけど、次に行ったら次が100%ってことですか?
谷尻:年に、1、2回だけ覚醒が起きる時があってですね、もうこれすごく良いのができちゃった、と思って眠れなくなるときがありますね。それで、今やろう今やろうみたいな、今つくってしまおう、みたいなことがあります。その時は一晩盛り上がってつくります。でも次の日になると、こうは言ったけどまだなんかできるかもなって思ってしまう自分がいるので、なんか、飽きつづけていますね。なんか現場で変えたくなることもありますし。ありますよね?
平沼:なるほどですね。 つぎの質問はないですか?
会場1:谷尻さんってなんか常にアイデアがポンポン出てきて、常になんかしたい、なんかしたいなんかしたいみたいな感じで設計やっているように思えるのですが、ちょっとアイデアに苦しんだときとか、ちょっと今そういう気分じゃないみたいな時に、どういうふうなことしてらっしゃいますか?
谷尻:寝ます。その時やらないのがいいかなと思っています。あるいは外に遊びに行ってしまうだとか。うん。
平沼:えっ、遊べてなんてないでしょ?
谷尻:遊んでますよ。(笑) 夜の街の安全をパトロールしていますよ。
会場:(笑)
芦澤:その辺昔と全然変わってないな。
谷尻:変わってない、変わってないね。そこでいろんなジャンルの人に会うことによって、やっぱりこう、違うジャンルの人にあうじゃないですか。今世の中の人って、こっちこう向いているんだなっていうのが見えてきたりとかします。それが実際コンペの時のアイデアになったりとかっていうことがすごくあるんですよね。
平沼:すごい!(笑) 谷尻さんを引き出す良い質問ありがとうございます。
谷尻:でもアイデアにはいつも困っていますよ、いつも。でも、問題が投げかけられるときだけに答えを出そうとするから、答えられないだけで、問題がない日常で、問題を自分で作って解決するくせをつけておけば、アイデア出す体質になっていくじゃないですか。それが大事なんじゃないかと思いますけどね。
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