芦澤:
ここで、ちょっとデザインの話をしてもらえませんか。
山崎:
デザインの話としては、僕らフィジカルなデザインの話ではないですよね。バーベキュー大会がしたいとか、おしゃべりしたいとか、家族ごとに少人数で使いたいとか、海を眺めてただ横になったり、ぼーっとしたいとか、半分バーベキューして半分はデッキにしたいとか、要望が色々ありました。この真ん中に二重線がありますけど、これがU字鋼にしてあるバーベキューの施設なんですね。U字構になっているところにこういうイスがぱかぱかはまっていくんです。だから、普段はU字鋼になっているバーベキュー施設が隠れちゃうんですね。これを全部持ってくるとデッキになるんですね。肉の臭いがしてくるかもしれませんが基本的にはデッキになるんで、その上で背もたれになっていますから。ここでもたれるとただ、それを組み替えるとによって少人数でバーベキューしたりだとか、あるいは並んでバーベキューしたりだとか、あるいは半分バーベキューしたりだとかということができますよと。あるいはこれを外に出していって、土間コンみたいなところに持っていくと別のとこに座ることができるものを、漁師さんとか島の人たちがつくれるような仕組みでつくらなきゃいけないということで。あんまりやっかいな構造にしちゃあまずいということだから、極めてシンプルな分業できるようなかたちで枠をつくっていきましょうとか、上にデッキをひいていきましょうということが簡単にできるようにしてやりました。これは関西の学生がいっぱい来て手伝ってくれましたので、大工は一人だけですね。ずっと、安全管理とかをしてくれて、教えてくれる大工が一人いるだけで、後はもう関西の学生がそれこそ塗装とかも全部やってくれたということですね。
芦澤:
これについて平沼さん何かないですか。
平沼:
いや、山崎さんすごく話をされますね。
山崎:
そういう感想ですか。ものについてでなくて。よくね、息継ぎしてくださいって言われますね。
平沼:
すごいな。
山崎:
たぶんね、貧乏性なんですよ。伝えたいことがいっぱいあって1個でもわかってほしいと思うから状態だけ前に出て後ろがついてきてなくて。
平沼:
ものには興味ないですよね。
山崎:
ものにも興味ありましたけど、それこそそのものの話をし始めるとポストモダンの話をずっと話し続けます。ただ、自分が設計してきて思うのはさっきみたいに自分たちが発案したとか、自分たちがつくったということにならないと、その後をうまく活用してくれないなということが多かったんですね。こんなかたちでつくると雑誌に載るだろうと思うようなことこそ、その後行ってみるとうまく使いこなしてなかったことが多かったので。僕がそういうことを決める以前に、実際に使う人たちと決めていかないと、特に公共施設はそうかなと思ったんです。
よく、住宅やるときは施主の旦那さんと奥さんと徹底的に話し合いますよね。それこそかなりプライベートな話まで。トイレの話も夜の話も聞かないとだめな場合もありますよね。そこまでやるから一緒になっている感じがするんですが、海の家もそうですし、公園も公共施設になった途端にそこまでディープに話し合う相手がいなくなるんですよ。きっと、市民はこれ欲しいだろうなってデザイナー側が勝手につくったものを、市民に、ある意味では使ってもらわなくてはいけなくなる。そこに無理があるような気がするんです。使う相手とじっくり話し合って、その人たちに使ってもらって。壊れたらリペアというか手入れもできる技術もつけてもらって。その後、そこに主体となるチームをつくって僕らは消えていくというのがいいんじゃないかと思っています。
平沼:
建築をつくっていると、ライフスタイルとして発展的なことを提案してあげたいと思うのですが、山崎さんの周りだと、今までの住まい方であったり、使われ方というものになじんだ置き方をされている部分が大きいのかな、と感じました。でも、先人の知識を得て僕たちは発展していくわけで、発展系の使い方を1つでも提示したいという想いを、僕の場合は持っているんですけど。
山崎:
同じですね。僕もそれがあります。だから、それこそさっきのプログラムの話でいうとレム・コールハースが優秀だったのは、新しいかたちをつくろうと思ったらプログラムを新しくしないと仕方ないということを公に言ってしまったということだと思うんです。図書館をつくってくださいと依頼があった以上、それをどれだけ崩れているようにつくろうが地域の文脈をぺたぺた貼ってつくろうが図書館であることは間違いないと。図書館でもあるし、ホールでもあるし美術館でもある、というプログラムを提示したときに、新しいかたちというのが出来上がってくるだろうと言っちゃったわけです。これって結構重要な指摘だったと思うんですよ。だからこそ彼らはAMOというもう1個のシンクタンクをつくって新しいプログラムを開発し始めた。studio-Lはそこをやりたいんですよね。つまり、先人達が積み重ねてきたライフスタイルや使い方、プログラムを読み解いて、こういう使い方ができるんじゃないんですか、という新しいプログラムのほうを提示したいんですね。それを実現させるためのかたちはみんなでつくっていけばいいと。
だから、旧来あるプログラムをみんなでつくりましょうというのは、確かになじむというか今まで通りのものを量産したことになっちゃうんでしょうけど。むしろ、僕らはプログラムの部分をデザインしたり発明して、それを愛着あるようにしていきたいのです。勝手にデザイナーがこねくり回したプログラムでかたちをつくってしまったら、使い手の発想は広がらないので公共建築はうまく使いこなせないだろうなと思うので、まさにプログラムをつくるところをまさに住民の人たちとやりたいと思ってますね。
司会:

お話の途中ですいません。時間が押してきているので、ここで一旦ブレイクタイムを兼ねて、今回217のご支援をいただいている企業さんのご紹介をさせていただきたいと思います。

(中略)

 

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