妹島 : まず、一番最初は、完成から2年くらい経っている、ローザンヌにあるEPFL、ローザンヌ連邦工科大学のローレックス・ラーニングセンターという建物です。
図面にあるようにキャンパスが取り囲んでいます。コンペのときに、学部別の学生どうしが別々のことを勉強している人たちと交流する場所がないということで、大学としてはそういう交流場所をつくりたいという説明を受けました。そんな場所から新しい学問的発展が生まれるんじゃないかと考えられていました。
最初のダイアグラムは、コンペのときに書いたものですけれどもそのEPFL、その隣に、UNIL、ローザンヌ大学があって、周りの人に24時間開放する場所をつくりたい。メインのプログラムは図書館が入っているのですけれども、誰でもきて、いろんなことを勉強したり、話しができる場所という位置づけです。ちょうど金沢の21世紀美術館ができあがった直後からこのコンペがはじまったものですから、1層だといろんなところから人が来れるのですけど、でも、建物のエッジまでしかこれないことについて考えました。それで、もうちょっと立体的な形があるのではと、真ん中まで人がいけるようなこの構成を思いついたのです。一部持ち上げることによっていろんなところから来た人が、そのまま建物の真ん中まで入ってこられる。それから、ちょうどキャンパスの前に敷地があったので、建物がどーんと構えてしまうと、街からキャンパスに向かっていくときに、この建物でビューがブロックされて既存のキャンパスが見えなくなってしまうのはいやだなということもあって、このように一部持ち上げることにしました。このまま既存のキャンパスにも進んでいけるし、この建物にも入っていけるというようなものをやろうとして、こういう構成を思いついたのですね。真ん中に1度入ったら、中は巨大なワンルームです。大きな丘があって小さい丘があって、つまり通り抜ける人は通り抜けてしまえばいいし、中から考えれば、丘2つによって3つの場所ができているという構成です。これが中の模型写真ですけれども、ここに一つ平らなところがあって、ちいさな丘にあがれば、向こう側にまた次の平地が見えて、その向こうにまたもうひとつの丘が見えるというような構成です。
これは断面ダイアグラムですけれども、地上から上がったりくっついたりすることで、普通中庭というのは外だけど中にクローズされているからインティメントな静かな場所になるんですけど、ここでは開けることによって、片方はインテリアとそのままつながって、片方は上がっているからそのままほんとの外につながっていくような中庭をたくさん開けています。高い方から湖が見える、それから大きな中庭を通して向こうに大きな湖がみえる構成です。
構造は、スラブが大きいところは80mのスパンとんでいます。空間的なチャレンジとしては、 床と天井が平行に動いているので、例えばこう上がってくると、見えるようでいても天井が下りてくる。ここにいくと、天井が上がっていくんだけれども今度は床があがってくる。全体が非常に大きなワンルームなのですけれども、エッジが見えなくて連続性だけを感じる。自分がこの中を動くと動きにともなってスペースが立ち上がってきて、だけどエンドは見えなくて、ずっとつながっていることを感じられる空間です。
これはプロセスですけれども、佐々木さんがつくられたコンピュータのシステムで実現しています。いままでも磯崎さんとか伊東さんと屋根としてはデベロップされていたのですけれども、ここではそれを床で試みました。コンピュータがそのまま教えてくれるわけではなくて、コンピュータと佐々木さんの会話で成り立っています。

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