平沼 : ありがとうございました。妹島さんはこのあと、9時には新幹線に乗らないといけないということも知りながら、最後に会場からのご質問にもお答えいただこうと欲張りなことも思っています。ちょっと駆け足でお話しをお聞かせください。

芦澤 : 後半のプロジェクトとは関係ない話しになってしまうのですけど、例えば先程の住宅とか、設計をはじめてから竣工までどのくらいの期間かけられているのでしょう?ものすごい時間をかけられてそうなイメージがあるのです。

妹島 : うーん。そうですね。

芦澤 : 5年とか…?

妹島 : さすがに5年はかかってないですが。…3年くらいかな。1回クライアントにすごく怒られまして。1回まとめても、やり直しを勝手にやったり、お金が収まらなくてもう1回やり直しをやったりしているうちにどんどん…時間がかかっていきました。

芦澤 : 設計に対して、スタッフの方とどのような進め方をされているのでしょうか?プロジェクトに担当者が何人くらいいらっしゃって、どのように妹島さんと打合せをしてやっていくかということを教えてください。

妹島 : 基本的に住宅だったら担当の人は1人だけど、だいたい若い人が住宅をやっていることが多いので、上にもう1人ついていますね。大きいものになると5〜6人くらいで、必ずコンタクトをとったりする中心の人を1人決めています。それでも、あんまり上手くいかなくなると、どんどん人に入ってもらったり、集中していろいろやったほうがいいという時期に、そのグループが大きくなったり。場合によっては、ひとりの人がいくつもにプロジェクトに関わっているときと、ある程度方向が決まって集中していくときには、他のものに関わらないで少人数で取り組む時期もあります。また1回まとまったものを見直すときには、また、わっと広げたりとか、そんな感じでやってます。
私がだいたい日本にいるときは、夜には事務所に帰ってスタッフの人と打合せをするという感じですね。

芦澤 : ものすごい深夜の時間に打合せされるというお噂を聞いたことがあるのですけど…。

妹島 : 基本的にはSANAAの打ち合わせは、西沢と両方そろう時間にしようとするのでどうしても夜から始まってどんどん遅くなるんですね。それから時差の関係から、日本時間の夜中からクライアントと打合せが始まったりしてしまうのです。それでずれちゃったりして、こっちが朝からいてイライラ待っていても担当の人がこないみたいなこともあります。でもこない理由は、さっきまでいましたからと言われると、まぁしょうがないかな、と。時差の関係からか、みんなで効率悪くなってしまっているところもありますね。

平沼 : テクスチャーのことで聞きたいのですけど、犬島の家プロジェクトで、アルミを外部に出していたり、庭の塀になっている部分であったり、ルーブルでもアルミを多く使われていたり。
一昨年ですかね?ロンドンのサーペンタインを見させていただいたのですけど、アルミのあの使い方は気に入っていますか?

妹島 : そうですね。でも、アルミはすごく難しいですよね。相当いろいろ調べてみたり、実験をしてみても、結局、最後の最後にどうなるかっていうのが…。実はいまも苦労していて、モックアップをつくって、みんなこれでいいと喜んで承認していたのだけど、いざ来てみると微妙にどこか違うんですよね。ほんとに難しいです。光沢をどのくらいで止めることができるのか、自分の中であまりピシッといかないですね。アルミ自体が絶対同じものがないということもあるのでしょうけど。だけど気に入っているのは、柔らかく反射させようとするときに、ステンレスなんかより白っぽいのが好きです。映すというのは基本的に黒い色になってくるわけだけれども、白っぽく映るのがいいなと思っています。

>>続きへ


| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | NEXT