石山:若いお二人なんか、建築の形とかデザインには非常に関心を持ったんですけど、結構モノの作り方・作られ方にはあんまり関心がいってないんですよね。そういうところがちょっと疑問だなーと思って、それはどうなんですかね?

芦澤:そうですね、プロセスとしての作り方というのは、非常にやりたい部分があって、やろうとはしているんですけども。
このハウスメーカーでやられている住宅の材料は、プレハブですか?それとも?

石山:そのメーカーが作りやすい、木質パネルを作りやすいなら木質パネルを、鉄骨系が作りやすい所は鉄骨系。どちらでも良いって言い方は不遜に聞こえるけど、僕はあんまり関心がないんですよ。モノの全体の値段だけに関心がある。

芦澤:すみません、質問にちゃんと答えられていないまま逆に質問させていただいてるんですけど、コストに関してはハウスメーカーの住宅でも色々…、石山先生なりのご提案を…?

石山:ハウスメーカーの家って、今日本の住宅生産の20%ですからね、こんなの世界でないんですよ。例えば、トヨタも日産も車っていうのは自分でデザインしようなんて誰も思ってませんよね。でも初期の車は、色んな人がデザインしようと思ってた。いずれ住宅もそうなるでしょう。世界的に見ると、あなた達がやってる住宅は、変な住宅って世界中の人に思われてるんだよね。僕が作ってるのは、ほんと変、変てこりんすぎる。時々価値がある時があるんですけどね。なんか変な動物園を見られているような、そんな感じがしないでもない。はい。次行きましょうか。
それで、僕は今、発電のことに非常に関心があるんですね、だから住宅あるいはアパート、そういうものをつくったら、それぞれが発電していったら良いだろなーと思って。ただ、メーカーでつくってるパネルが信用できないんですね。だから、ソーラーセルっていうものも組み合わせて。僕のところでドイツと関係があるものだから、ドイツのセルなんかも用意して、このぐらいのセルでどれくらい電気ができるのか、世田谷式生活・学校てのをやってるんですけど、そこで今、試作をしているところです。鉱石ラジオを昔、ガキの頃につくったように、発電ができるっていうことを分かってもらえるキットみたいなことを、今はつくっています。
これで一攫千金当ててやろうと思ってるんですけど、ソーラー簾、て奴でね、3万円ぐらいの簾ですよ。開け閉め自由な奴です。それで電気をとるっていう、集合住宅につけられるようなエネルギーキット。山形のメーカーと今、一緒につくってる最中です。だからこれがもし、万が一、うまく開発できると、結構僕大金持ちになる可能性がある。

平沼:では、この辺でちょっと質問を…。建築において植物として自然をどのように捉えられていますか?

石山:昔…もう昔って言えるぐらい年をとってきたんでね…、若い頃は、植物が大っ嫌いだったんですね。

平沼:あ、そうだったんですか。

石山:植物は邪魔だから、切れみたいなね、うん。それぐらい植物邪魔だったんだけど、今はもう、植物がないと駄目ですね。なるべく植物で隠れててほしい、というぐらい植物は大事だと思いますね。

平沼:はい。もうひとつ、今のエネルギーの関わり方、ひとつ事例をあげてくださったんですけども、どのようにそれぞれのプロジェクトに対して考えられていますか?

石山:住宅とかアパート、人間が住むところを設計するとき、エネルギーを少しでも生産できるべきだろうし、エネルギーを調整する機能を持ってないカタチだけのものていうのは、全く意味がないと思うんですよね。

平沼:はい。

芦澤:あの、ちょっと良いでしょうか。世田谷村ですとか、先ほどのハウスメーカーとの住宅でも、エネルギーのことを建築としてやられていると思うんですけれども、東京ですと巨大な電力会社、インフラ会社があって、そこから大量のエネルギーが供給されていく都市構造に対して、石山先生が建築をつくられてそれを啓蒙されていくというような、何かお考えがあるのでしょうか。

石山:それはね、都市って言うけど、都市に対する発言は、丹下健三の大阪万博の時に完全に終わってるんですよね。あれ以降は何もないですよ、都市的なスケールでの、モデルとしては。都市って、結構みんな気楽に言ってるけど、出来もしないこと言ってるんだよね。出来ることをやらないといけない。建築建築って言うのも恥ずかしいけども、あんまり気楽に都市とか、都市をデザインするとか馬鹿なことは言わない方が良いと。

芦澤:はい。となると都市計画っていうのは…、もはや無い、ということでしょうか?

石山:都市計画と建築って全然違うもんね。都市計画っていうのは官僚がやりゃ良いんだよ。逆に言うと、良い役人にちょっとデザインマインドを教えるぐらいで…。都市計画系がやりたいんだったら役人になるべきでしょうね。

芦澤:なるほど。

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