平沼:次の質問をさせてください。なぜ建築をやめないのでしょうか。

石山:なぜ建築をやめないか。やっぱりね、こういうものを時々作ると嬉しいんだよね。作っても拍手してくれないっていうのは切ないんですよ。変な同業者みたいのだけ、悪いとか言ってね。でもね、拍手してくれないけれど、ものを作った時のなんかゾクゾクゾクっとする、なんか生きてる実感があるんだよね。うん、だからなぜやめないのかって言ったら、やっぱり好きだらかではないのかな。

芦澤:ちなみに、やめられようと思われたということはありますか。

石山:うーん、まぁその道に入っちゃったから…、やり直すんだったらもっと楽な仕事やるだろうね。

平沼:じゃあ次に、今後どんな建築を作られたいですか。

石山:やっぱり今のみたいなでっかいのを作りたいね。皆さんの世代だとやっぱり将来は中国。第二次世界大戦以後は、今日来てる会場の若い人達なんかは、アメリカ人ですよ。あと30年もたたないで中国の時代になるんだよね、絶対に。ホント中国の建築趣味って物凄い悪いですよ。あれと戦うのは面白いだろうな。ヨーロッパ人が一番嫌ったんだからね、中国趣味って。でも、ヨーロッパの趣味も、まぁ似たようなもんだと思うけど。中国の時代になっても厳然と残るような、そういう建築を作りたいですね。

 

石山:これはね、ベトナムのダナンって所だよ。ダナンっていうのは、ベトナムがアメリカに勝った所なんですよ。、ダナン空港をベトコンが包囲して、アメリカ軍を撤退させたんだよね。ダナンに五行山って山があって、ここの計画を全部やってくれっていう話があって。ダナンと、ベトナムと、日本は沖縄を経由して海のシルクロードで結ばれてるんです。僕は宮古島とかそういうところに手をつけてるから、こう、ラインが引けるといいなぁと。誇大妄想狂的だよね、海のシルクロードって勝手に言ってる時は楽しいからね。
この敷地に、今までの教育では望ましくないと言われてきた宗教建築を一つ作りたい。それから、僕らが学生の頃、今でもそうじゃないかな、屋根かけるとだいたいCがついたんだよね。屋根がかかったらCなんですよ。それはなぜか分かんないんだな、モダン、バウハウスの教育なんだよ。そういう自分が嫌になっちゃってるから、もうドカンドカーンと屋根かけてやろうかなと思って。いくつかのタブーに挑戦してみようかなって思ってる。
ベトナムって建前として共産主義なんだよね、共産主義的資本主義。中国は完全に資本主義を超えた共産主義ですからね。中国で今一番儲かる建築は寺院ですよ。変な国なんだよ中国。
これマスタープランです。これ、全部ね。都市計画やりたい人は日本にいちゃ駄目だよね。都市計画やりたいって人は、共産主義の国家に行くべきだろうな。さっきから見て頂いている掩体壕、どうしてももう一回やってみたいんだよね。それで、掩体壕がゴロンゴロン転がって上に土が被さってて、それで屋根がかかってるっていうのをやってるんですよね。これ学生が僕に出したら完全にCですからね。瓦屋根ですよ。

芦澤:ひろしまハウスも屋根をかけられてましたよね。

石山:あれはね、カンボジアが架けろっていったの。王宮の隣にある、カンボジアを代表する寺院の境内だから屋根をつけろって。最初ね、反対しよかなぁと思ったけど、それでもね、あっちが言うことのほうが自然なんだよね。だから屋根架けてみたらね、なかなか良いんだよね。それに味をしめたっていうか

平沼:なるほど。

石山:これは、だからこれ学生が描いたら完全にCですよ。古墳の上に屋根がダーッとかかってる。こういう巨大な庭園計画をやってます。
僕の友達で、中国でばかでっかい寺院作ってるやつがいるんだよね。長さが4キロで高さが二百何十メーターあって。これは中国では寺院は共産主義だから建前としては作っちゃいけないんですよ、だって宗教禁止だから。じゃあなんでそんな建築ができるのかっていったら日本人向けの観光施設という申請をしてるって言ってた。スーパーマーケットかと思うぐらいでかいですよ。
それでさっきのアニミズムってやつをちょっと集中的にやってて、それで「アニミズム周辺紀行」っていうのをずっと書いてるんですよ。僕らは渡辺さんにしても、出江さんにしてもみんなジャーナリズムで育てられた世代なんだなぁ。建築雑誌がすごいたくさんあったんだよね。今、建築雑誌に力がないでしょう。誰も読んでないんだよね、出したって金になんないでしょう。本はもう作っても売れないから、自分で作ったほうがいいなぁと思って。さっきの発電と同じですよ。今はコンピュータがあるから自分で編集デザインできんだよね。自分の書きたいことだけを書いて、テーマはアニミズムなんですよ。それを作って出版もやってんの。

>>続きへ


| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | NEXT