塚本:窓のプロジェクトがもう一つあります。吉祥寺にあるハモニカ横町に「エプロン」というおでん屋さんをつくりました。ハモニカ横町は、建築的にほぼ既存不適格で、防火性も低く、構造も脆弱です。しかし火事も少なく、地震でも壊れずに維持されている。そのためには、人がこまめに面倒見るしかない。逆にだからこそ、空間が柔らかく、弱く、人に近い。ここは間口が2.6mで20uしかないので、路地に面したファサードを大きな上げ下げ窓にしました。季節がいいときは全開にして、外と交じった状態になります。そうすると、おでん鍋が路地から手が届きそうなところに見えるのがポイントです。

芦澤:いくつか質問があります。先ほどのプロジェクトのロッジアですけれども、季節が良いときは快適な使い方が見えてくるんですけど、冬のロッジア的な場所はないんですか?

塚本:南向きで2層分あるので冬の光がしっかり奥まで入ります。すると腰壁や壁が午後中あたたかい。その輻射熱を利用すれば、冬でも天気の良い日は利用できます。

芦澤:外部と繋がっていく環境をつくろうとされているんですけど、冬はどちらかというと距離感が発生しないですか?

塚本:野菜を干すとか、冬でもあれば出てきて何かするでしょう。その機会が奪われないようにしたいのです。

芦澤:実際に何かもうすでに何棟も売れているんですか?

塚本:まだ製品化していません。

芦澤:あ、そうですか。

平沼:へー。

塚本:普通のアトリエ・ワンの住宅と同じくらいかかってます。

芦澤:建築家の個別解をやりすぎて、もう少し共有していく何かが必要なんじゃないかというのが近代以前の日本の持っている形式であって、新たにその形式を僕らがつくっていかないといけないんじゃないかなと思うことがあるんですけども、その辺はどうですか?

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