塚本:共有していく上で大事なのは、今ここにいる人間が共有するだけじゃダメだということです。すでにあの世に行ってしまった人たちや、自然とも共有していかないと、未来の人と共有できません。想像を広げて、建築がつくる枠組みに、「今ここ」以外を含めることで、未来の展望が開けると思っています。

平沼:建築を設計していて、どんなことに問題を感じますか?問題だらけなのか、問題ないのか。社会的な問題とか?

塚本:制度の壁でしょうか。近代的な社会を組み立てる中で、人々の側にあったものを、システムに移し替え、バラバラに分解されてきたために、いろんなバリアがつくられてしまった。バラバラになったものを、つなぐ何かを新たに考えるより、なぜ、どのように分解、切断されたのかに立ち返り、その条件を見直すことが大事だと思います。

平沼:なるほど。リサーチと建築をどのように結びつけられていますか?

塚本:リサーチと建築の実践は仮説でつながると良いと思っています。リサーチで捉えた都市空間の現象がなぜ成立するのか仮説を建て、その仮説から今この条件だったら、あるいは未来のこんな条件だったら何が生み出されるだろうか、という方向に意識を移せば、つくるロジックになります。というわけでリサーチと建築はそんなに遠くない。仮説を導けば、創作に転じられるということです。

平沼:そんな塚本さんご自身の個性はどんな所にあると思われますか?

塚本:私の個性は…、生命観に対する感覚が少し違う気は、最近しますね。

平沼:生命観か、わかります。(笑)

芦澤:もう少し具体的に建築のつくり方とか。

塚本:昔のやり方に潜んでいるある種の知性みたいなものを、今の世の中で使えるようにひっぱり出すことを初期からやっているような気がします。

平沼:次のプロジェクトについてお願いします。


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