手塚:子供は守らなくちゃいけないってよく言うけど、例えば、これは外ですよね、廊下を歩いて濡れたらどうするんだっていう話になるんですけど、よく言うのは、子供って耐水性なんですよ。風呂の中に入れても溶けない。だけどiPhoneって、私は防水のケースつけてますけど、水にいれると壊れちゃいますよね。だから人間ってすごいんですよね。夏暑いときは、わざわざ50度の砂浜に行くでしょ?で、冬はマイナス20度のゲレンデに行きますよね。暑いときにわざわざ暑いところにいって、寒い時はわざわざ寒いところに行くんですよ。それでも大丈夫なんだから、立川ぐらいならほっといても大丈夫だろうって。実際にはね、雪が降る頃にはさすがに閉めるんですけども、ほとんど開けっぱなしなんですね。そういう思想があります。あ、これ面白い、珍しい写真なんですけど、ここにいるのはTNAの鍋島ですね、今年の日本学会賞になった、所員としての最後の作品。彼女が獲れたのはとっても嬉しいんですけどね。この当時はまだ所員でした。でもずいぶん昔ですね。
こう、部屋が自由にわかれていると。

芦澤:家具で仕切ってる?

手塚:家具で仕切ってるんですね。なんとなく仕切って、音が出てもいいやって。これは井戸端会議させようっていう。最近ね、みんなプレステとかね、任天堂なんとかしかやらないので。これはクリスマスで、こう木があって。こう上の女の子が下の猿をつってるっていう。ここからサンタクロースが降りてくるんですよね。

平沼:なるほど。

手塚:これは、みんなLEDだと環境に優しいと思ってるでしょ? だけどね、実はそれはそうじゃないんですよ。その話をするとキリがないんですけど、電球を使っていた昔の方が電力を使ってなかったんですよ。みなさんね、結構騙されているんですよね。電球を使っている家って、部屋の中を計ると100 lxも平均ないんですよ。LEDの家っていうのは、少なくとも300、500ないと満足できないんですよね。そしたら10倍ぐらい明るくなくちゃいけないと。蛍光灯だともっと明るくなくちゃいけない。人間の目っていうのは、照度計とは違うんですよね。これね、電球がいっぱいぶら下がってるんですよね。全部で300個以上あるんですけど。100本以上紐が下がっていて、引っ張ると3つだけつく、必要なかったら消す。だからバーンって一気に点くんじゃなくて、必要な時だけつけて周る。そういうことでエネルギーの大切さを教えるっていう話ですね。
これは、どのぐらいの遊びが屋根の上にあるかっていう話で。太田さんという、小林教授の研究室の学生が調べてくれたんですけども、普通の幼稚園の5倍かな8倍かな、忘れちゃったけども、はるかに多いゲームがあるんですよね。要は、遊具をいっぱいつくると、遊具の説明書通りにしか遊ばないの。そうじゃなくて、何にもなくて建築のエレメントだけだと、みんな一生懸命自分で考える。
それから、子供がどのぐらい動くかという話で、9時10分から9時30分の間に、たった20分で、このこどもはどのくらい動いたかっていう…、こいつは凄いですね、外周り180何mかあるんですけど、午前中で6,000mを超えたんですよね。

芦澤:ははは。

手塚:へとへとになりましたってその女の子が言ってたんですけど、ところが平均が4,000mを超えているんですよ。最近、確か千葉大だったと思うけど、調査して、非常に「ふじようちえん」の子どもは運動能力が高いって。なんでこんな高い状態なんですか?って園長先生に聞いたら、いや放牧してるだけだよっていう。

平沼:ははははは。

手塚:何かしろって言わないんだけど、勝手に動き回る環境をつくる力を建築が持ってる。関西のほうだったら中村勇大先生が言ってますよね、アフォーダンスの話とか。建築のアフォーダンスを感じたっていうのが、ちょっとアカデミックな説明です。
これは隣にできたRing Around A Treeっていう、Peter Cookさんがつけてくれた名前なんですけどね。Ring Around Rosesっていう歌があってそれにちなんでつけてくれたんですよ。これもなかなか大変で、とにかく木を目立たせないといけないというのと、根の上にのっけちゃうと枯れちゃうので浮かせてるんです。この時は天井高の制限がなくなったので…、撤廃しちゃいましたから。おもいっきり低くしちゃおうってことで、高さ5mの中に7枚床を入れました。

平沼:5mの中に7枚…

手塚:そうするといっぱい頭ぶつけるところができるんですよね。もうひとつ、全部のエレメントを木より細くしなくちゃいけないっていうことで、柱が3cm角ぐらいしかないんですよ。みんなエレメントが非常に細いです。階高を抑えるとその分だけ柱のプロポーションが細くなるので、ものすごい小さくなるんですよね。
こういうところがあると危ないので、まずうちの子供を入れます。あいつら頭蓋骨が固いのでちょっとぐらいぶつけても大丈夫なんで。ここにうちの子供がガーンって頭ぶつけたんですよね。ぶつけたところはちゃんとマーキングをして。で、うちの息子の方には絆創膏を貼って。

平沼:ふははははははは。

手塚:こうやって調べて、飛び降りて大丈夫かなとか。こいつももう小学校4年生になっちゃったんですけど、もう昔の写真ですよね。これも、もう大震災の前の写真ですね。ずいぶん前になっちゃいましたね。で、こう危ないところをいろいろみて、幼稚園の子供をいれると。そうすると訴訟にならないので、うちの子供で危ないところをまず確かめるっていう。これね、紐を張ってあるのは、木を登って外に出ちゃう奴がいるっていうのに気がついたんですよね。うちの子が、ここから乗り越えて1階まで降りてきちゃったんです。元気な奴はそういうことしちゃうので、ちょっと安全装置を施しています。
今の問題って、子供を守り過ぎているので、このぐらい安全かなって、つかむ力がないんですよね。「ふじようちえん」の園長先生が面白いことを言っていて、子供の時に手も足も折ったことがないから大人になってから背中折るんだよみたいなこと言ってて、ずいぶん乱暴だなって思うんですけど。だけど、本当その通りなんですよね。やっぱり、子供の時に怪我をすることで覚えることって多いんですよね。この子も大丈夫かなぁって思ってて、そうすると、また色んな子が助けたり、色んなことするんですね。こういうことってすごく大事なんですよね。こんな風に使っていて、遊び道具だけじゃなくて、英語教室とか色々入っているんですね。
これは、うちの娘のまだちっちゃい頃ね、もう中学生になっちゃいましたね。

平沼:可愛い。

手塚:可愛いですね。私もそう思います。これはもう彼氏ができたら大変ですよ。

平沼:ふははははは。

芦澤:ははは。

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