手塚:予算が合わなかったりとか。もうキリがないですよ。大事な事は常にこう、ポジティブでいる事かなと。ゴールさえ見えていれば、いつかゴールできるかなって。

平沼:なるほど。何で建築やめないんですか。

手塚:だって面白いじゃないですか。

芦澤:はははははは。

手塚:よく言ってるんですけれども、生まれ変わったらもう一回建築やるって言ってるんですけど。

平沼:そうですか。

手塚:で、うちの子ども達もそれ見て楽しいから建築やろうかみたいな勘違いしてるんですけど。大変な所を見てないのかも知れないんだけど、私達が建築を作る事によって、例えば色んな人が救われたり、例えば今本当にセブ島とかで非常に危ない所とか連れてってるんですよね。Lorega districtとかで、ごみの中で鉄くずとかあさってる子ども達を見せるわけですよ。そうすると、俺もこういう事を、なんとかしなくちゃいけないなと思うようになりますよね。

芦澤:ええ、ええ、ええ。

手塚:そういう意味で、今本当に生きててよかったなと思うんで、やめる理由がないです。

平沼:なるほど、なるほど。じゃあそんな手塚さんはどんな建築作りたいですか。

手塚:建築ってこんな建築作りたいって言って、仕事が来るもんじゃない。だけどね、どうしてもって言われたら私、空港作りたいってよく言います。

平沼:ああ、ああ。それはなぜですか。

手塚:空港ってね、やっぱり一番ドラマティックな場所だと思うんですよね。空港って面白い格好をつくるのがいいんじゃないかっていう感じもするんですけどね。今世界中のこんな色んな、カラトラバだとかフォスターとかピアノとかがやってますよね。私が思うに、空港ってやっぱり出発の場だと思うんです。色んな事が起きる場だと思うんですね。どういう出会いが起きるかとか、どういう別れが起きるかっていう、建築家だからこそつくれるドラマがあると思うんですよ。そういうドラマを作れるっていうのは楽しいなと思ってます。

平沼:ああ、いいないいな。

手塚:昔、駅を題材にした、フランスのセ・ラザールとかを題材にした映画とかあったでしょ。ゴダールの映画とか。ところがそういうのは残念ながら、今の駅ではないわけですよ。ちょっと行って、すぐ帰って来ちゃうから。

平沼:ふふふふふ(笑)。はい。

手塚:オリエンタルエクスプレスもないし。だけど空港はあるんですよ、まだ。だからそういう所をやってみたいなと思いますね。

平沼:会場から質問をとりますね。どうですか、お2人ぐらい。

会場1:本日はありがとうございました。話の中で、多様性の話があったと思うんですけれども、手塚さんの好きな都市とか、多様性のあるいい景色とか、そういう好きな街並みはありますか。

手塚:好きなところ多いですよ。香港の旧市街とか大好きです。意外と、新しい建物の所って好きじゃないですね。あの怪しいこう、バルコニーにこう、違法なものが取り付いて、屋上に増築してる。ああいうの大好きだし、昔の街だったらアマルフィとか皆さんご存知ですね。それから、好きな街で1つ、ジャイサルメールってわかります? インドにラジャースタン地方っていうのがあるんですよ。アラビアンナイトのあの世界が残っている地域があって、ラジャースタンっていうんですよ。そこに、ジョードプル、ジャイプール、ジャイサルメールってこう、有名な3つの街があって、ジャイプールっていうのはピンクシティっていって、全部街中がピンク砂岩でできてるんですよ。それから、ジョードプルっていうのはマハラジャが感染症を避けるために青く塗ったっていう街があってね、中も外も全部青なんですよ。それからジャイサルメール、これはゴールデンシティっていうんですけど、金色なんですけど実は金があるわけじゃなくて、砂岩が黄色に輝いているんです。キラキラ。何が入ってるのかよくわかんないんですけど。そのジャイサルメールっていうのはね、石をずーっと薄く削っていくと、向こうから光が抜けていくんですね。いわゆるレースみたいなんですよ。そっから光がぶわあーっと落ちてきて。建物の中に入ると、光が体に満ちて、海の底を歩いているような、光の海を歩いているような、そういう空間が続いている。そういう夢のような世界なんですよ。だけどね、そのおもしろいところは、綺麗にしてるんじゃないんですよね、牛の糞もあって。どこまで綺麗だか、どこまで土だかわかんないようなところなんですけども、そういうところってすごい生きてるっていう感じがするんですよね。だから、バラナシっていう、いわゆるお葬式とかやる川のところ、なんかそういうところが大好きですね。
私は本当に旅行をいっぱいします。毎年30回ぐらい海外にいくんですよ。昨日までデトロイトにいて、一週間前はストックホルムにいて、その前は韓国にいたんです。でね、どこいっても素晴らしい街ってあります。

芦澤:仕事以外でも行かれるんですか。結構。

手塚:ええーっとね、仕事にかこつけていくことが多いですね。家族と行くときはね、バリ島が好きです。

芦澤:ああー。いいですね。

手塚:バリのあの文化が好きなんですね、ウブドって言って。

芦澤:ウブドいいですよね。

手塚:ねえ。ウブドの王様がまたおもしろい人で。

>>続きへ


| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | NEXT