平沼:なるほど。すこしだけ話しを戻させていただいて、高校時代に美術に長けた子と出会い、その後に大学に入り、どのような学生でしたか。例えば、成績は優秀でしたか?

山下:わわっ…正反対です(笑)。
一応、大学の先生として、学生に教えていたりもするので、あまり話したくないですが、芝浦工業大学は当時、1学年130名ほどいましたが、僕はいつもビッケ(ビリ)でした。 理由は僕は、大学へあまり行かなかったのですね。まぁ、1ヶ月に1回ほどでしたかね? この会場にも多くの学生さんがいると思うので、真似しないでくださいね。 時代や社会が違います。まぁ、当時は授業に行かなくても「代返」ができていたんですね。 分かりますかね? 二人の出席確認を一人が声色を代えて返事するような時代でした。はい!はぁい〜!なんて。(笑)

芦澤:(笑)先生もわかって許してくれていましたよね。

山下:許していましたね。 当時はアルバイトをしないと生きていけず、大学2年間は教養学部が本当につまらなかったので、ひたすらアルバイトをしていました。仕事をすることは結構好きで、いろいろなものをやっていましたが、どうすれば効率的に出来るかを考えて、先読みして真剣にやっていました。アルバイトを辞める頃になると、スタッフになるように毎度勧誘されたのは自慢のひとつでもあり、嬉しかったですね。当時は空き時間はアルバイトのみをして、その他はお酒ばかり飲んでいました。そのときこのままではまずいと思い、2つ自分に課したことがありました。1つは本を100冊読むこと。本は幼い頃から大好きだったので、年に本を100冊読むことにします。漫画本ではなく、しっかりとした哲学や美術書、歴史書など満遍なく読みました。そしてもう1つは、映画を100本見ること。大学時代に勉強をしなかったので大学院まで行きましたが、この2つだけは絶対外さず取り組んで、6年間に600本および600冊以上読むことは続けましたね。

芦澤:1年間に100冊を超えて読んでいたのですか?

山下:いや、もう超えていましたね。

芦澤:すごいですね。設計演習などは出られてたんですか?

山下:あんまり出ていませんでした。特に2年生までは設計演習があまりありませんでしたが、絵はそれなりに書けたので、いつも130数人中10番以内でした。ある時に友達にコンペに出そうと誘われ、学生コンペを出しました。そうしたら物の見事に、箸にも棒にもひっかからなかったですね。しかし、現実に僕が住んでいるようなアパートの絵を描いて出しても意味がなく、社会がどのように動いていて、自分たちが建築を通して未来を描いていけばいいのかを表現したときに勝つということを、その時に教えて貰ったんですね。その時に「これって面白いじゃん。」と思いました。また僕はどちらかと言えば、理系より文系で、本やアートも好きだったこともあり、それからは結構真剣にやりましたね。当時の授業や設計演習の担当は、藤井博巳でしたが、130人の内でだめな学生を3人ぐらいあげて「こいつは誰だ?」と問うたり、何がだめなのかを話したり、とにかくいいものを選ばないんですよ。悪いものを選んだんですよ。そしてそれに僕は2度ほど選ばれて、とてもショックでした。

平沼:もっともっとお聞きしていたいのですが、このままだと建築家としてご活躍をされる時期の前まで終わってしまいます。(笑) そろそろ作品をご紹介いただけますか。

山下:ほんとだ。(笑)はい! 今日のタイトルは「地域が元気になる仕組みをつくる」と言っています。僕は大学で教えたり、建築業界の方々に呼ばれて講演をすることも多いのですが、次第に子供たちや市民に話す機会が増えてきて、その人たちとどうやって話を共有しようかと常々思っています。また建築家としてものすごく多くの建築を、数にして300以上の建築を作ってきたことから、建築だけじゃない、なにかいろいろなものが少しずつ見えてきました。これをみんなで共有して何かを変えて行けるのではないかという想いで今は建築の仕事をしています。その話を共有するために今回作品の話を持ってきたと思って下さい。作品はいっぱいあり、いろいろな方向のものがありますが、今日はできる限り焦点を絞って、話をしたいと思います。今現在は自分の故郷について触れ、多くのことを感じているので、奄美のことを4割から半分ほど話をするかもしれません。そのようなことで進めていきたいと思います。会場にいらっしゃる半分以上の方が建築に携わっていると思いますが、「建築基準法」についてお話します。おそらく一級建築士の方もいらっしゃると思いますが、僕は「法律の根本ってどこにあるんだろう?」と思い、憲法があるように、建築基準法は一番大事なのではないかと最近は思い、紐解いていきました。ちょっと難しい言葉ですが、この法の中で「国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進にすることを目的とする。」とあります。みんな命は守るものであり、そのために建築という箱を作るんじゃないですか?建築は公共的なものではありますが、要は、建築は公共性よりも、あるパブリックなひとつの表現として語っていけるのではないか、そういう意味でも建築は大分使い、影響を及ぼすのではないかと思います。そのような言葉は「僕らは一級建築士であり、建築基準法である。」ということを使命とされているのではという思いがあります。僕は今や動いているのはまさに、この基準法一条に則ってやっているような気がします。一級建築士の方も多いため、すでに見たことはあるものですが、意外と新鮮ですよね、建築基準法に関して、どうですか?

芦澤:新鮮ですね。改めて言いますと、まっとうな。

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