山下:このように活動していて、これもまたちょっと紹介だけなんですが、アルミを使いました。エチオピアの次にこんなアルミの構造体の未来的なものですが、当時アルミが構造に認可されました。そして何か使いましょうという時に、僕はアルミは高いけれども、一般の人たちが使えるようにアルミを構造だけではなく、熱環境のパネルにし、または照明に使い、機能の箱に使おうと思います。このようなお風呂場、これさえも構造体であり、機能のボックスであり、照明であるような、多機能にしようと考え、このようなことを行いました。
 次に千葉県の採石場で余った土を使って行ったプロジェクトです。これは東京大学と早稲田大学と一緒になって、コンクリートを使わない住宅がどうやってあるべきかを開発しました。東京大学は松村先生が担当で、火星で建築を作るときには火星の材料しか使えないため、その時には土しかないということで、松村先生にもご協力いただいて、「そこにあるもので何か建築を」というテーマでやりました。
そして2011年の震災が起きましたが、伊東豊雄さんたちとNPOを行う以前から僕は阪神の震災以降すぐにNPOを作って、災害復興をずっとやって来ました。そこで、僕のさきほどの土のプロジェクトを見て、津波の被った3つくらいの地域から「山下さんだったらこの塩水かぶった土を何とかできるんじゃないか」とありました。そこで酸化ソイルを行いました。その1箇所が備蓄倉庫です。被災があった時に何か必要なものを入れるのに備蓄倉庫を使い、これを住民の学生と子供達1500個作ってみんな名前を書いて、このように餅まきをして建築にした。僕はこれがすごく大好きなもので、これが先程言っていたロンドンのLEAF Awardsでサステイナブルの賞でグランプリを頂きました。これは9平米しかなく、次のものは1万何平米なのですが、ありがたいことに3つ賞を頂きました。これが一番小さいものでしたね。ロンドン行って審査員に賞いただいた時に、君はさまざまなものをするけど、これいいねって言っていただきました。その時は「あぁ、なんか建築やってて良かったなぁ」と思いましたね。そしてこの時に災害復興住宅のコンペがあり、1棟目を平田晃久さんが獲り、2棟目を僕らが獲って、その後に伊東豊雄さんから声が掛かってみんなの家の何棟目かをやる事になり、手伝ってと言われて、喜んで伊東豊雄さんと一緒になってやったのですが、そこでもやはり僕がやりたいのは地域に捨てられた素材を使ってなんとかしたいと思い、伊東さんといろいろな話をしながら捨てられている物を学生達と一緒に作り上げていきました。これは津波を被った杉の丸太の皮を剥いでそれを屋根に使ったという作品です。捨てられた物を使うのはすごく労力が要りますね。そしてこれが打ち上げです。そこで伊東豊雄さんに10数棟あるみんなの家をまとめるためのNPOを作る提案をしました。以前からNPOを作っていたので、任せてもらい、設立までのいろんな仕組みを作って、伊東豊雄さん筆頭に、妹島和世さん、山本理顕さん、Astrid Kleinさんがおられ、今は熊本の支援をしています。つい一週間ぐらい前も伊東豊雄さんとMark Dythamさんが熊本の方であるイベントに参加しておられました。

芦澤:いくつかご質問をさせてください。素材という視点ですごい面白い作品を色々見せてもらったんですけど、エチオピアのあのような、プリミティブでローカルな状況に対する提案と、その次に、あまり詳しい説明はなかったのですが、アルミの非常に都市的で近代的な、でも素材の可能性を追求するという作品について、場所や状況によっておそらく色々変えられていらっしゃると思うのですが、そういう事を同時にやっていく時のストレスとかメリットなどは、考えておられますか?

山下:作品は、僕だけでは絶対にできないです。そのためにチームでやります。チームをまとめ上げて先に進むこととチームが動くという事は大変ですね。アルミのプロジェクトでは20社くらい、大学も含め20社くらいの企業が入りました。エチオピアの時は、僕を選んでくれたのはいいのですが、半分のお金は用意するから半分のお金は集めろと言われました。そこでチームを作ってお金集めをしていました。チーム作りとお金集めはすごくストレスなのですが、逆に言えば、建築といえば人ではないですか?

芦澤:なるほど。

山下:かなり人についての勉強をさせられました。そして、お金集めについてもです。単純に夢があるからお金くださいと言っても無理だし、国の仕事だからお金くださいって言っても無理です。こういう言い方、こういう段取りで言えばお金が手に入るんだというようなことであったり、また、企業にはこのような言い方をするとお金を出してくれるんだということ、そのような事を勉強しましたね。ストレスはあまりなかったですね。基本的に好きなんですよ。

平沼:奄美におられる山下さんのような方から、自然と建築の関わりは、どのように考えておられますか?

山下:奄美は実は、風速5、60の台風が年間5、6本来るんですよ(笑)。

平沼:すごいですね。

山下:そうなんですよ。それとハブがいるんですよ。で、ハブと台風で奄美は守られていると思っています。台風が来るという事は、台風で飛ばされたりする事ってあるんですよね。そのため「自然に寄り添わないと人は生きていけない。」という事はもう幼い頃から当たり前に学んだし、どのような自然環境でも寄り添っていけば、そこにマイナスだけじゃなくプラスも見えてくる。プラスが見えてきた時、そのプラスにどうやって転じていくか、そのような事を考えます。建築と自然との関わり、建築というのは自然に寄り添ってさえいけば人もそうですが、僕はすごく良いものに成り得るだろうと思います。

平沼:なるほど、なるほど。

>>続きへ


| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | NEXT