芦澤:若手を逆にどんなふうに見られてますか?

栗生:非常に柔軟に対応できるんじゃないかと。若いからというのもあるんだけどね。ちょうど僕が学生時代の時に、オーストリアの建築家のハンス・ホラインって人が、すべては建築だと宣言したんです。それに僕はすごくショックを受けました。例えば、さっきも話したみたいに、海洋博の仕事をした時に、お魚博士とイルカの調教師と一緒に行って、いろんなこと調べる。それも建築だし、こういう会場で皆さんとこういう風に話をするのも建築なんだというふうに考えていく。或いはさっきの、都市博で水没する広場を作る、あれも建築なんだって考えていくと、やりようはいっぱいあるんじゃないかと。青天井だと思うんですよね。だから、今まで通りの一つのプログラムがあって、その通りに合わせてものを作っていくんじゃなくて、提案はたくさんしたほうがいいし、無限に提案をできる、提案して悪いことはない訳ですよね。だから、一つの建物を頼まれてもその周辺から始める。一緒にそれも提案していく。商業施設の時はやるんですけれども、小さいコンビニのようなものを頼まれても、そのオーナーの友達にみんな集まってもらって、敷地が広ければ、ちょっとした複合の商業施設にできるわけです。前に道があればそこにバス停をひっぱってくる、後ろに川があれば橋も一緒にデザインする。それは十中八九実現しないですけれども、一つ二つそういうものが実現してくると、繋がりができてくるじゃないですか。そういうものにチャレンジしていくっていうか、そういうものをプロデュースしていく。そういう役割が建築家には求められているとも思うんですけどね。

芦澤:最後に見せていただいた都市博のお仕事は、ちょっと他のスライドとは少しこう雰囲気と言いますか、作られている形もちょっと違うなぁという印象で見てたんですけれど。

栗生:従来の建築ではないですもんね、単なる池をつくるという、あれで実施設計まで終わってたんです。あれができてたら、また広場の考え方が違ってたと思うんですけどね。水を備蓄するってことで。

平沼:あの、月並みの質問で、学生たちも多いので。どんな職業かってみなさんに答えていただいてるんですけど。今日、実は49回目なんです。建築家というのはどんな職業ですかね?

栗生:僕はいろんなところで話させていただいてますけれども、必ず言うことはね、「建築家というのはほとんど詐欺師」です。ふふふ。これは何かというとね、さっきの都市博のときの、総合プロデューサーは泉眞也さんでした。日本の万博おじさんって言われてる、日本の万博には全部関わっていた人なんですけれどもね。ある時、「栗生君ねぇ、建築家というのはほとんど詐欺師だよね」って言われるんですよね。僕はそのとき若かったので、ムッとして、「先生それはひどいじゃないですか、詐欺師じゃないですよ」「いや僕は詐欺師だとは言っていない、ほとんど詐欺師だ」と。夢を語り、いろんな提案をし、すごいお金、何十億何百億お金をかけても、結果としてオーナーが納得して喜んだら詐欺にはならない。だけども失敗するとそれは詐欺になる。そういう意味では、ほとんど詐欺師、綱渡りしているということですよね。だからやったことは必ずオーナーに還元していく、喜んでいただく、っていうことを前提に、できるだけ風呂敷広げなさいよと、ということですよ。だから建築はこういうものだと縮こまらないで、すべてが建築だって考えることから始めるっていうのは、そういう意味だと思うんですよね。どんどん提案すると。ダメ元でね。

平沼:はい。 ありがとうございます。

芦澤:ありがとうございます。




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