長谷川:みんなが元気に生きていく、生命力溢れて生きていくための環境とか都市とか、街だって建築だってみんな人が生きていくためのものをつくっている訳ですけど、ここに関わるような発言って政治や行政の場からは無いんですね。建築家がやるよりしょうがないでしょ。もっと積極的に何かやった方がいいと思うんですよね。建築家の役割っていうのは、これからもっともっと大きいだろうし、政治家に任せておけない。

平沼:今日ね、大阪の行政の方沢山来て下さっているんです。

芦澤:(笑)

長谷川:あ、まずい。
 後は、次の時代は揺らぎとか、身体的なことや感性的なこととか、そういうことを含めた建築がもっと積極的にできてくる時に、優秀な女性がリードしていくというのだってあるんですよ。そういう人たちが会社とか建築家の中に出てきて、本当に新しい時代の建築のリーダーになっていく事がいいんじゃないかなと思うんですね。

平沼:うーん。

芦澤:うんうん。

長谷川:もっともっと。私は建築家でやってきた中で、女性ということで凄く大変な時代を生きてきましたよ。

平沼:いやあ、もうそれは、もう、はい。

長谷川:本当に。変な扱いを受ける事が度々で。そういう時代遅れはもう終わったので、これからは女性が生きやすくなって、新しい時代では女性はすごく期待されている訳だから、もっともっと積極的に。もっと女性の方から積極的にやったらいいんですよね。期待をしております。

平沼:最後の質問です。月並みで申し訳ないんですけど、みなさんに聞いていて、建築家とはどんな職業ですか?

長谷川:おそろしい事を質問しますね。(笑)

平沼:いやぁ、すみません。

長谷川:いやいや。ひとりの人間として何かを提出していくのは、芸術として建築家をやることも可能だと思うんです。でも、建築っていうのは社会に向かって提案してくことであって、やっぱり社会を動かすようなエネルギーをもって進んで行く方が面白いと思うんですね。だから、建築家っていうのは、自分が社会との関わりの中でどう生きていくかって事も意識する。それが職業人としては大切だと思うのです。住宅作家として、住宅が芸術だと篠原一男は言ったけれども、篠原一男は最終的には、住宅建築を社会の産物にしたかったからあんなに叫んだんですよ。芸術だと言っても、自分の中に閉じこもるつもりはなかった。だからものすごくムキになって建築を公開し、発表して、そして論文を書いてきたんですよね。だから、どんな建築家を目指そうとも、社会と対峙しているんだという自覚は持つべきだと思います。それが無いと街や人の環境を良くしていく力にはなり得ませんからね。そういう意識をもつ職業だと思います。

平沼:そのご回答に、大変なエネルギーを感じます。そしてそんな長谷川先生の生き方というのか、向かい方をみて、女流建築家というのは、今の時代になり、ようやくだんだんと増えてきた訳です。若い人たちの聴講者が今日多くいるので、お聞かせください。女性で建築家を目指している子たちは21世紀にも夢がありますかね?

長谷川:もちろん!私の時代よりもずーっと可能性が開かれていますから。社会が期待していると思います。私の時代とは社会の迎え方が全く違いますよ。大いに活躍して欲しいし、そういうプラットフォームの上にいますからね、皆さん。

平沼:わぁ。勇気がわいてくるようなお話しです。今日はどうもありがとうございました。

長谷川:こちらこそありがとうございました。

芦澤:ありがとうございました。

田中:ありがとうございました。

会場:拍手

田中:大変心苦しいのですが、長谷川さんには先にご降壇頂きます。皆さん大きな拍手でお送りください。

会場:(大拍手)

平沼:ありがとうございました。

田中:ありがとうございます。

平沼:なんか、長谷川先生、いいですよね。

芦澤:そうですね。やっぱり建築家はもうちょっと頑張らなあかんと。

平沼:社会と対峙して。

芦澤:励ましをもらいましたね。

平沼:ね。男子の事は言ってないので、僕らにはもっと頑張れと。

芦澤:僕はそう聞こえました。と、受け止めます。はい。

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