平沼:今日は木造建築をテーマにご説明をいただいたのですが、建築空間を考える時に、他の周辺分野で影響を受けたことはありますか。

坂:ぜんぜん質問の答えに当てはまらないかもしれないですが、僕は、紙管や木など、弱い素材に興味があります。極端に言えば、プラスチックのビールケースなども仮設住宅では、使ったりしています。現在では、東レとカーボンファイバーを使ったスペースフレームを開発しています。やはりカーボンファイバーは軽いですから、その軽さを建物に活かして利用したいんです。この間ね、体育館のコンペで負けてしまいました。僕は素晴らしい提案だったと今も思っています(笑)。

会場:(笑)

坂:何を提案したのかと言うと、計画地が埋め立て地だったので、当然、杭が必要になる規模でした。ところがカーボンファイバーで構造を設計していくと、基礎をつくるための掘削工事で土が出てきます。するとその土の重さと屋根の重さがイコールになるので、杭が必要なくなるんです。それによって工期が大幅に短縮できる。そういうものを提案したのです。しかし冒険しすぎたのか、採用されませんでしたね。でも、こういう新しい材料に非常に興味を持っています。

平沼:ありがとうございます。

芦澤:スイデンテラスにも泊まらせていただいたのですが、その建築の外部空間はもちろん、形態やインテリアまで徹底して1つのものとしてデザインを考え抜かれていると思います。今回のスライドの中でも色々ランドスケープがありましたが、ランドスケープに対して坂さんは、通常どのようにアプローチされているのですか?または、どなたかいつも一緒にされている方がいらっしゃいますか。

坂:インテリアは全て自分でやりますが、ランドスケープはやはり専門の方にお願いしています。オンサイト計画設計事務所や最近はよく、団塚栄喜さんという面白い方がいらっしゃるのですが、その方と仕事したりしています。いつもその仕事に合わせたランドスケープの方にお願いしています。最近、珍しくコンぺに勝って、豊田市博物館を進めているのですが、隣接地に谷口さんが設計した美術館があり、その前のランドスケープはピーター・ウォーカーがデザインしています。これはいいやと思って市が指定した敷地と全然違う所、谷口さんの横にわざと並べて設計して、敷地の間にある木を全て取り払ってピーター・ウォーカーに電話でお願いして、谷口さんの建物と同じ比率でその庭を連続させました。谷口さんの建築は、20世紀のマスターピースのような建築ですから、僕は21世紀的な材料として、リニューアルな材料とエネルギーだけを使った建物を設計して、20世紀の代表と、21世紀の新しいものをランドスケープで繋げました。

芦澤:比較できて、面白いですね。

平沼:それは楽しみです。ピーター・ウォーカーさんがまだこの時代にご存命だったことに驚きましたが、僕は伝説的な方のイメージです。

坂:まだまだ、お元気ですよ。

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