田根:照明がふわっと点いたり消えたりするんですが、見ていると闇の中から急にハンドルが浮かび上がったり近づくと消えていったりと、どういったプログラムによって光をコントロールしてものを見せるかということをしました。実際に砂型を見ていただけるのですが、本当にシャープな細かいところまで高密な砂によって固められたものなんです。もう1つの部屋ではこんな風に実際に作るというので、尾崎さんという職人の方に来ていただいて指導を受けながら、ミラノでインターンを集めました。どうにか場に動きを出そうとと。

平沼:作ったんですか?

田根:はい。実際に砂を込めて鋳造するというので、この時は約200度のスズを使って流し込んで形にして、NASAの研究のようですね。こんな感じのものを見てもらうということをミラノでやりました。

芦澤:やはり砂とか土とか、考古学の最初のイメージよりも、地面の下の世界にすごく興味があるような気がするんですけど、気のせいですか?

田根:いや、まあそうですね。最近、物質や工業製品が優れていけばいくほど質感が失われたり、建築も大地から切り離された近代的なビルというものはあまり地面を必要としていなくて敷地だけあれば良いんですけども、やはり建築と大地をもう1回繋ぎたいという意味で、掘るとか、土とか、そういうものがもしかしたら建築と切り離すことができなくなると感じているのかもしれません。

平沼:ここで会場から質問をお受けしましょう。

質問者1:田根先生、貴重なお話をありがとうございます。先生のお話を聞いていると、すごく過去のことから今の未来の建築を考えているなということが分かるのですが、その中でも特に自然というものに意識があると僕は感じたのですが、未来というものを考える上で、自然というもの、植栽や植物をどのように捉えているのかお聞きしてもよろしいでしょうか?

田根:そうですね。自然は、あんまり考えないかもしれないですね、笑。すみません。自然はやはり自然の方が良いと思っていて、等々力みたいに緑があったら気持ちが良いなとか、そういった自然の力が建築に影響を与えてくれると思います。風が入ってきたら気持ちが良いなとか光が入ったら良いなとか、ただ僕は、あまり自然よりは建築の方を頑張って考えようとしていました。大事なのは自然と建築に関して、もう古代から自然の中に建築を作ることはかなり難しい問題があって、雨風もあるし、地震もあるし、台風なんかに耐えなくてはいけない。建築には人の生活を守るという大きな役割があるんで、それに向き合えるのが建築の大事なところかなと。

平沼:ありがとうございました。もう一方だけ。

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